満州の小説を読みたかったんだけれども、これどちらかと言うと大阪の話だね。いや、それはそれで面白いから良かったんだけど……
戦後の大阪というのは全くエンタメで触れたことはなかったので、あーそうかーこういう空気かーというのが面白かった。民主主義国家に生まれ変わる最中の空気、という感じでございますね。警察組織の縄張り争い、みたいなのが、バディ警官の組み合わせにもきっちり象徴されていて、おーなるほどなあと思いました。大阪/東京の対比でもあるんだなあ……「えべっさん」「ルンペン」みたいなちょっと馴染みの薄い題材とか、あと水の都であることを思い出させられる水路での殺人とか、細部がいちいち異文化という感じで良いですね。
また、キャラもやっぱり大変良くて、異なる文化で育ったキャラクターが価値観をすり合わせていくのはまあどうしたって面白いですね。父親の問題でお互いがお互いを強く信頼し合うようになる、みたいな構造は、まあどうしても好感を持ってしまいます。
ただまあ肝心のミステリ成分に関しては、ちょっと当たり前って感じで面白さがよくわからなかったかなあ……満州で栽培というとまあ「アヘンだろうなあ」というのは見当がつくわけで、その種明かしへの工程が、ちょっとなあ……これこれこういうことがあってこうなりました、を工夫なく見せられている感じは、結構ある。襲撃へのテンションの高め方なんかも含めて、もう少し工夫があっても良かったんではなかろうかしら。