いやーなんか面白い感覚に陥る映画だなあ。
ペルシア語を教えてくれという軍人は、確かにナチスではあるんだけれども、そんなに悪い人間とは思えない作りになってるのがめちゃくちゃ不思議な感じ。これがユダヤ人をガンガン迫害する悪役! って感じの悪役だったら、偽物のペルシア語を教えることに良心の呵責を覚えることはないと思うんだけれども、そうじゃないんだよなあ。自分を騙した人間には容赦ないけれども、まーそれだって普通に自分が騙されていたと知った時の振る舞いなワケで、そのまま即殺さないのはむしろ温情じゃね? と思ってしまうような自分もいる。
いやまあ客観的に見ればそもそもユダヤ人にそういう強制労働をさせている側が悪いのは当たり前なんだけど、でもそういった常識が大きくねじ曲がっている異常な環境で、生き残りのために、他人のささやかな望みを利用して人を騙さなければならない……というのを追体験させられるのは、もうめちゃくちゃ面白いよなあ。戦後、現地でペルシア語が通じないことを知って愕然とする軍人を見て、どういう感情を抱けば良いのかが全然わからない。「戦争」の魔法が解けちまったんだなーという感じ。