あーよかった。ピアキャスという単語が小説に拾われて本当に良かったと思う。自分はここら辺の文化にどっぷり……というわけではないけれども、一応その周辺の雰囲気は多少感じておりましたので、こういう小説がこういう形で世の中に出て良かったと本当に思います。マジで。
と同時にスマートに強固な構造を持ったメタい小説でございまして、途中ドラッグでドカーンと吹っ飛んでしまってもきちんと枠組みが回収してくれる? 安心感がございますね。この年代のドラッグ文化の端っこを掠めるような描写もされていて、そこら辺でもまーよかったなーと思うところでございます。この小説が世の中に出て本当に良かった。
さてさて献辞で「千野帽子」の名前があってほえーと大納得したわけではありますが、この小説は正しく物語を語ることが宿命的に持つ原罪と、それを虚構の上で人為的に操作できるゲームというメディアと、そしてまあそういった物語に回収することの難しい現実の間を行き来してはのたうち回るワケではございますが、ゲームの立ち位置が大変興味深かったです。ポケモンが最初のモチーフになっていたり、オンラインでの対戦FPSが前半のキーポイントであったりと、そういった一元的な物語的価値判断に回収されるのを拒絶したコミュニケーションが主体のゲームがあるんだなー。途中にいくつかのエロゲーが触れられて、テーマ的にはそこを取り上げる道もなくはないのだ蹴ろうけれども、Eve Onlineできちんとある種の神話を打ち立てる行動をとるっつーのは、うーん良くやり遂げたなあという感じでありました。
あとまあ最後にスピードアップして現実に接続してその先に突き抜けるのも、大変好ましく、ナイスな締め方だと思いました。