ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

滝山コミューン一九七四

 

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)

 

団地の本を読みたいなーと思って買ったらだいぶ違う本だったのだけれども結果オーライ。なんか全く予想もしていない方向に面白くてうーんエキサイティング! って感じだった。

戦後からバブル前までの日本は「高度経済成長期」とか言われるけど俺全然歴史の感覚が掴めておらず、60年代の学生運動とかもう全然イメージが掴めないのよね。市民主導の政治運動とかもう全く異世界ファンタジーみたいなもので。まして教育の現場でなにが起こっていたのかなんて全然想像がつかないし、ってかそもそも自分の小学校時代の記憶なんて完璧に朧気だし教育の意味とか全然考えたこともなかったよ!

なのにこの作者の小学校時代の記憶は大変鮮明で、しかも思考回路はだいぶマセていて、へーこういう感じでこの時代を過ごすようなガキもいるんだやっぱ人によってものの見方は全然ちげーなーと思うと共に、いやしかしこの本ってどこに行こうとしてるのあまりにも私的でノスタルジックで追っていくのがたりーなーと思っていたのが前半。なのだけど、後半で6年生になって学校全体に運動が波及していく下りになると、もう俄然面白くなっていくというか、ジリジリと逃げられないいやーな感じが迫ってくるですよ。あー、人間の思考ってこうやって枠組みにはめられて、しかも当人にとってははめられていること自体気付けないのかー、って空恐ろしい感覚。でもってそこから逆算すると、そのいやーな感じが伝わるためには、前半のあの私的でノスタルジックな感覚も必要不可欠なものだったんだなーと感心させられました。最初はただの趣味の話かよって思ってた鉄道までもが土地の特殊な背景として回収されるんだもんなー。いやあ、面白い本だった。