ウクライナの戦争で、何度かこの本が言及されているのを見たのでようやく読んだ。
いやー、面白いねえ。NHKの記者さんらしいけれども、日本でもキッチリこういうメディアの取材ができるんだなあと感心した。ドキュメンタリーって、なんだかんだいってもそこにそれを見る側の視点が大事だったりするわけだけれども、これはズバリ日本のメディアの忸怩たる思いなのがバッチリ刻印されているのが本当にいいよなあ。メディアの人間がこの題材を扱ったら、絶対に中立的な立場から書けないに決まってるもんなあ。
内容は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の知識が全然ない自分なんかにもわかるように書いてあって、いやー大変ためになりました。ニュース番組でわかりやすく伝えるように工夫していただけあって、「3人のジム」みたいなキャッチフレーズが本当に上手いよなあ。このしち面倒くさい題材を、軸となる登場人物を絞って、物語仕立てでキャラクターを立てながら、わかりやすく変遷を伝えるその筆致は、いやはや本当にすごいよなあ。出てくるシーンは少ないけれども、ガリ事務総長のキャラ付けとか、ほんとよく書けてるわ。
そしてまあこの延長線上に、現在のインターネットを使った情報戦があるわけね。CAが日本じゃ全然取り上げられなかったり、ひろゆきがガンガンメディアで持ち上げられていたりするのを見ると、いやー相変わらず日本は周回遅れですねえ、みたいな気分になるよねえ。