ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

芙蓉千里

 

満州舞台の作品をちょくちょく読んでるけれども、今の所コレが一番良かったなあ。女性同士の友情を軸にした共感しやすいストーリーラインでありながらも、当時の満州の特殊な時代背景がガッチリ噛み合った設定で、馴染みのない世界の状況がスラスラ頭の中に入ってくる。五族協和って言うけれども、そもそもロシアが極東でどのような政策をとったかとかすら肌感ではわからんので、こういう私的な視点で切り取った世界情勢があると、やっぱりめちゃくちゃ面白いわけで……

っていうか、日本人が主人公となったエンターテインメントで、開拓精神――というとちょっと語弊があるな。辺境に押しやられた弱者視点の物語が成立するのは、かなり新鮮味がある。北海道開拓に関わるストーリーだったら、もしかしたら似た感じになるのかなあ……

うーん、しかしアイヌをテーマにしたエンターテインメントだと、どうしてもこう帝国主義的な内容に寄ってしまうので、あくまで芸妓にこだわったこの作品の視点は、正解なのかもしれないなあ。まあ、まだロシア革命が起こったあたりの時代なんで、これから先関東軍がぐいぐい出てきたらそれどころじゃないのかもしれないけれど。っていうか、伊藤博文暗殺とかロシア革命辺りの哈爾浜で、日本人がどのように迎えられていたかって、あんまり想像力が働かんよな。まだ満州国なんて全然成立してない時代だもんなあ。

ともあれ、続刊も読んでゆきたい。