主旨はいいし内容も所々素晴らしいんだが、圧倒的に分量が足りないな……ロジックがアクロバティックなのはこの性質上仕方ないことかもしれないけど、しかしもうちょっと分量を増やして丁寧にやらないと納得感得られないのではないか。というか自分はあまりの短さにキョトンとしてしまったよ……
ただまあやっぱり自分の体験に引きつけた文章というのは素晴らしいなあと思った。自分、ドキュメンタリーをよく見るけれども、日本の作品って「客観的な視点」に寄りすぎるか、それとも「あらかじめ作られたストーリー」に添うか、みたいな両極端になりがちだよなーって印象がある。まあ海外のドキュメンタリーはふるい落とされた粒ぞろいばかりが届くって言うのもあるんだろうけれども、取材対象の言葉を丁寧に拾い上げようとする意思は、海外作品の方が良く感じるよなーと思う。
あとまあ、そういう生っぽいところから出た言葉が刺さる、というのもその通りで、快楽に忠実なエンタメばかりを追いかけたらちょっと出てこないワードがガンガン並べられるので、いやー凄いなあと思う。筆者も言っているけれども、これは客観性批判ってわけじゃなくて、むしろナラティブとかの力をもうちょっと重視しようぜ、みたいな感じの本ですね。面白かった。