ファーザー

ファーザー [Blu-ray]

いやー、これは良くできてるなー。

アンソニー・ホプキンスが主演男優賞取ったの色々話題になったけれども、この芝居を見ると納得は納得だよなあ。認知症の人間の内面を芝居として見せるって大変な難題だと思うんだけれども、よくもまあコレだけきっちりやるもんだ……まあセリフが良いのもあるんだけれども、ある種の男らしさに縛られた戦前生まれの男性が、最後の最後で母親を呼びながら泣きじゃくるとか、ある種冗談のようなラストシーンが、彼の人生かの呪いから解き放つように見える描き方にすらなっていて、いやー、すげーなーといわざるを得ないよなー。

小津？　みたいに徹底的に部屋の中に据え付けられたカメラは、視聴者と父親の混乱する世界を追体験するのに大変効果的に機能していて、所々でシームレスにあり得ない変化が起こっているのがまあとても効果的だよなー。物語の真実を揺れ動かすことで視聴者を揺さぶるという趣向を、部屋という空間を用いて直感的に表現しているのはとても素晴らしいと思いました。様々に不確かな物語が並列して進み、彼にとっての真実がどこにあるか全くわからない中で、朧気に浮かび上がる末娘への愛情……うーん、良くできてるわコレ。見終わって思わず拍手してしまいました。