絵画系のミステリかと思ったら全然違った。まあナチスとユダヤ人を巡るホロコーストと美術品の話で贋作も絡んで、という道具立ては良くあると言えば良くあるが、中盤で起こる入れ替わりのパートが圧倒的に面白い。それまでの映画が一体何だったってくらいサスペンスしていてビックリする。っていうかあのパートだけで一本映画撮ったら良いんじゃないかな……スイスに亡命するとあなたも英雄としてたたえられますよ、みたいな説得の巧みさとかマジで最高だと思う。あとあの婚約者もキャラが立ってて良いですねー。あの時代の美人! って感じ。
しかしあのご都合主義のドゥーチェ失脚以降の展開がもうタル過ぎてなー。ぶっちゃけあそこで謎的なものは解消されてるので、ラストとかあんなたっぷり見せなくてもいーだろと正直思う。その手前の詐称に天罰が当たるパートもホントサックリ解消しちゃうし、うーんもう少し見せ方があったんじゃないかなー。
しかし友人は美味しいけれどもさすがにちょっと悪役として描かれすぎて気の毒にはなりますね。っていうか主人公が聖人過ぎて、もう少し彼に対して苦悩するような彫り込みの深さがあっても良いんじゃないかしら……戦争がバックグラウンドにあって結構シビアな話のはずなので、こうもガッツリエンタメにされるとそれはそれでちょっとビミョーな気持ちになるというのはありますね。ってかオーストリアの映画なのね。ドイツとはちょっと扱い方が違うもんですなー。