ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

バンクシー 壊れかけた世界に愛を

 

バンクシー 壊れかけた世界に愛を

バンクシー 壊れかけた世界に愛を

 

はい、面白い。最高に良い本です。いやー、今年は良い本ばっかり読んでて幸せだなあ。

バンクシー周りの作品は結構見てきたけど、これが一番わかりやすいんじゃないでしょーか。いや本当にバンクシーというバズワードをきっかけに懇切丁寧に一般人とグラフィティ/アートを結びつける仕事をしていてマジで尊敬します。バンクシー知るならこの本からはじめて良いんじゃないですかね。

なんか今までざーっとアート系の本を読んできた感じだと、デュシャンの「泉」でアートって文脈のゲーム? っていっちゃアレか、でも物そのものよりも、むしろ前提知識とか解釈とかを内輪で楽しむものになっちゃってるかんじが、ある。美術でも印象派とか野獣派とかはなんとなくわかるけど、そっから先は「なんでこれがアート?」ってなっちゃうし。的外れかもしれないけれども、それが資本主義の発展と相乗効果をうんじゃって、アートが裕福で教養ある人間のマネーゲームの舞台になってる、みたいな、そういうイメージがある。株とか先物取引とか為替とかそういう(実は中身なんて何でもいい)コマのウチのひとつになっちゃっている、みたいな。だからオレらにはもう関係ないものになってて、そこには断絶があるよーな。

でまあ、この本は自分のそういう漠然とした現代アートの印象に、バンクシーの位置取りをはっきりと刻んでっていってもう最高。バンクシーがなぜストリートアートにこだわるかという解説が、彼の出自からもう鮮やかに行われて、もう最高の一言であります。ファイブポインツの話でもすげーなーと思ったけど、パレスチナのホテルにイギリス人の立場から向き合ってるのも、いやーほんとすごい。そしてそれを体験しに行った筆者もほんとすごい。

いやもちろん、ひとつひとつの作品がめちゃくちゃ刺激的だし、またそれぞれのプロジェクトが恐ろしいほどの説得力を持っていて、いやーすごいなーと感心するので、それだけ楽しんでもいいんですけどね。なんかこの説得力は、ストリートを通して直接人間に働きかけたい、という強い願いがあるからこそ、生まれてるような感じがめちゃくちゃするんですよね。

うーん、やっぱすげーなバンクシー。すごいのはわかってたけど、うーん、すごすぎるわ……