ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

美術館とナショナル・アイデンティティー

 

美術館の歴史の話を読んでいたと思ったら、現代日本の公共や国家に関する考え方までバッチリ到達してしまって、その理路整然とした展開にもう降参って感じですよ。いやー、めちゃくちゃ面白かった。この人、バンクシーの解説本も書いているけれども、ブリストルという様々なルーツを持つ場所出身で、アートを美術館から解放しようと活動する彼を題材として取り上げるのは、いやー大納得って感じですね。全部ひとつの線に繋がってんだなー。

ナポレオンでナショナリズムがどうこうってのは、そりゃまあ歴史の本を見れば色んなところで触れられているわけだけれども、今回それが初めてバッチリ腑に落ちたかもしれない。そしてその転換が、美術館によって国が自己を定義する「物語=歴史」を手に入れることによって行われた、というのは「あー……」って呻き声を上げるしかないなあ。合わせてそれまでの美術館がミクロコスモスで、歴史的視座がなかったっていうのももう納得感しかないし……そうだよなあ。人間がただひとりで生きるだけだったら、時間の流れは循環しているし、そこに線形の「歴史・物語」を見出す余地はないもんなあ。こういう自分の当たり前だと思っていた世界観が、ひとつのテーマを元にひっくり返されるのって、大変な知的興奮を覚えますね。いやー、最高。