ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

アンビュランス

 

あ、はい。オレこれ好きです。マイケル・ベイってやっぱこういう映画上手いよなあ。

『ペイン&ゲイン』がなんか知らんけどスゲー好きでときおり見直しているんだけれども、見れば見るほどキャラ付けがうめーなーと唸らされるんだよね。もちろん個性派俳優が揃ってるから下駄が履かされてる部分もあるんだけれども、しかしあの短いセリフでキッチリキャラを印象づけてるのほんとすごいよなあ。

でまあ、この映画も『ペイン&ゲイン』っぽいって噂をちらほら聞いてたんだけれども、まあ似てると言えば似てるかな……? まあ、向こうは筋肉馬鹿を通じてアメリカ社会を描くという、大変知的なことをやっているけれども、こっちはエンタメよりのワンシチュエーションの人間ドラマで、印象としては全く違うよねー。

いや、「救急車で殺しては生けない人間を人質にして逃走劇をやる」というのはバツグンに冴えたアイディアで、外と中のドラマを並列で走らせながら、それぞれ立場の異なる人間の振る舞いを描く……というのはもう最高に素晴らしくて、大満足だよね。趣向を優先して多少苦しいなーと思うところもあるけれども、これだけ描きたいものが明快だったら別にどーでも良いよなーと思う。ただ大事なのは、ワン・シチュエーション的な連続した時間の流れで、回想シーンとかほとんどないのに、それでもそれぞれの人物の生き方を深く彫り込む人間ドラマに焦点が合ってるところだよなあ。保安官の回想シーンとか、いやはや、ちょっと泣けちゃいましたよ。

無駄に車がクラッシュしてたりして馬鹿っぽい印象もあるけどさ、やっぱこれちゃんとした映画ですよホントに。

コラテラル・ダメージ

 

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  • アーノルド・シュワルツェネッガー
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コラテラルと混同して既に見たものだと思っていた。トム・クルーズではなくてシュワルツェネッガーの方のアクション映画。

いやまあなんつーか大変愛国的な映画でございますわねー。まあ合衆国旗のマグカップ使っているしそういう感じなんだろうなーとは思ってたけど、しかしこういうテロリズムを扱った映画でしかも現地の人間を皆殺しにしておいて、けどテロリストが悪いアメリカ守る! みたいな感じにしてしまうこのエンタメ感がすげーなー。皆殺しにした人間も結局因果応報で死んじまったから結果オーケーみたいな? いやいやいやいや……2002というと911の直後でありますから、そりゃまあテロリストに対して同情的に描く必要はなかったのかもしれないですが、それにしたってねえ。

シュワルツェネッガーは消防士をやっているわけですが、なんというか、この人ってあんまりシリアスな役柄が難しいのかしらねえ、とは思いました。動きとか別に俊敏なわけじゃないし、立ち振る舞いに明るさというかユーモラスな感じがどうしても透けて見えてしまいますよね。だから序盤の家族パートとかほとんど描かずに、消防士としてのオバカアクションでキャラ立てしたのは正解なんだろうなーと改めて思いました。っていうか、あー、911の直後の消防士か……そういう意味でもかなり象徴的な役柄ではあるのだな。

バクマン。

 

ようやく読んだ。

マンガ創作を描いた漫画は傑作がいくつかあるけれども、これはいかにもジャンプマンガって感じだなー。全体を通して「ハガキによるアンケート」がめちゃくちゃ重要な指標になっていて、たぶん他のマンガ雑誌じゃここまで「順位を巡るドラマ」を軸に物語を展開することはできないんだろうなーと思った。例えばドラゴンボールではスカウターが逆接的にキャラクターの強さを表現するための指標になったワケだけれども、この作品では「ハガキの順位」が描かれている漫画の面白さを示す指標になってんだよなー。まあ、マンガ内マンガで十分にその魅力を示すことって不可能だから、こういう仕組みはどうしても必要だったんだろう。例えば作中作の『PCP』がそんなに面白いとは思えないもんなー。

でまあ、そこら辺を含めて「計算型」って感じのする作品ではあって、そこら辺がメタ的な視点から見ても面白いよなあ。特に元ファンの子のエピソードで、作家と編集者が個性を引っ張り出すマンガこそが面白い、みたいな作家主義的視点が強調されるワケだけれども、このマンガにそういう部分があるのか? といわれると正直よくわからん。いやまあでもヒロインとの関係性とか恋愛系の描き方には確かにそう言うのでてる気もするか。

あとまあなんだかんだ言ってラッコ漫画描いてる人のエピソードがコミックリリーフとして全体を救ったよね、とは思う。まさかあのアシスタントの人のストーリーさえ拾ってしまうとは思わなかったもんなー。あそこら辺は本当にあのキャラがいて良かったなーと思った。

“死刑囚”に会い続ける男

 

題材はまあ確かにわかるんだが、このまとめ方はどうなんだ?

死刑囚の描写も怖いが、オレにとってはこの記者の内面が全く見えなくて怖い。死刑囚と文通を行って心を開かせて何らかの話を聞く……というのはかなり精神的負担がある作業のはずで、それに継続的に取り組むというのはかなり特殊なことだと思う。しかも、それぞれの人となりから迫るのではなく、とにかく「死刑囚」という括りで人物にアプローチしていくのは、ある種の歪みがあるんじゃねぇの? みたいな感じがすごくする。のだが、このドキュメンタリーはそこら辺のインタビュイーの内面を全く掘らない。ただひたすら熱心に手紙を書き、聖人のように颯爽と刑務所に向かう姿が映されるだけだ。まあ死刑囚に焦点を当てたいのはわかるし、自分が監督だから仕方ないのかもしれないけれども、絶対この人にフォーカスしてもっと私的な部分を引っ張りだした方が、ドキュメンタリー作品としては良いよなあと思った。

いやまあ、死刑囚も確かに興味深い題材ではあるんだけれども、思想が明らかに偏っている人物を正義の立場から取り上げてすれ違うだけ……というのを、こういう風にまとめるのって、やっぱり悪趣味な見世物という感じがするんだよなあ。最初のエピソードの、地域住民がサポートにつくくだりとか、ああいうのはきちんと取り上げる意味があると思うんだけれども……やっぱり一番知りたいのは、この記者の立ち位置だなあ。

東京2020オリンピック SIDE:B

 

SIDE A に比べてかなりテンションが落ちている印象。

色々理由は考えられるんだけれども、東京2020オリンピックのコロナ禍の状況を客観的なスタイルで記録映像に残すのは、ちょっと手に余ったんじゃないかなーと思う。Aの方はカメラがガンガン動くみたいなスタイルの面から、これが「私」の視点で切り取った主観的な映像であることが伝わったけれども、Bはそれよりも客観寄りな印象があった。やはり時系列を示して順繰り順繰りに出来事を示していくだけで、そこには客観を指向するニュアンスが出てしまうんだろうなあ。逆にAのOPは、印象の強かった出来事がとりとめもなく並べられていた印象だったということだろう。

Bで一番印象に残ったのは、バッハはバッハなりに筋を通したのかなーということで、もしかしたら彼に対する印象は、コロナ禍のストレスなんかでバイアスがかかっていたのかなーと思った。広島に向かうのは、五輪の理念からするとまあ筋は通っているよねえ。

一方で全然印象が変わらなかったのは森喜朗。自分の失敗を認めたら全てが瓦解するので、心の中では何を思っていても言わない……みたいなメンタリティはいかにも日本的って言うか、あーこれ太平洋戦争でみたやつだ!! みたいな気持ちになった。いや、ホントやベーよね。

あと野村萬斎と佐々木宏の対比もまあ強烈だなー。この作品では開会式のいざこざは全く触れてないし、開会式自体の様子も大坂なおみの聖火点灯など、限られたものしか流してないところからも、そのメッセージは明快だよなー。ってかあれだけの人物が顔を揃えているのに、野村萬斎が「日本文化への理解度が全く違う」みたいなコメントをしているのがメチャクチャ印象的だった。ああいう簡易な演出に留まって、逆によかったのかもしれねーなー。

東京2020オリンピック SIDE:A

 

Bも一緒に見たけれども、Aの方が断然面白い。

とにもかくにもOPのテンションがメチャクチャ高くて、雪の桜に消え入りそうな君が代をのっけるその覚悟ったらない。序盤はAB含めて総括するような編集で、公式の記録映像とは全く思えない、手持ちで臨場感のあるカメラの映像ばかりがチョイスされており、このパートだけ圧倒的に「コロナ禍の東京オリンピック2020を私の視点で切り取った映像」になってるんだよなー。当事者の混乱がそのままフィルムに載っけられている感じで、競技そのものの崇高さみたいなのは全く感じられない。前にNHKでやってた監督のドキュメンタリーを見ていて、全く違うものが出てくるんだろうなーと勝手に想像していたので、ぶったまげてしまったよ。まさか公式映画でこんなモノを見せられると思わなかった……河瀬直美の映画、まだ一本も見ていないので、ちゃんと見なきゃなーと思った。

さて、OPに比べれば競技映像の様子がちょっとテンション低いけど、でもこっちもかなり興味深くて面白かったです。ってかまさかここまでジェンダーと差別に全振りした内容だとは思わなかったよ。育児なんかとの両立を取り上げたり、女性の視点がメインになっている中に、やっと男性が取り上げられたと思ったら、沖縄の民族の問題をきちんと描くんだもんなー。Bの方でしっかりアイヌのコメントも拾ってたりして、そこらへん大変行き届いているなあと思いました。

いやー、マジで面白かった。ほんと、あのNHKのドキュメンタリーは何だったんだよ……

快感回路 なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか

 

いやまあうんそうだろうねそう思ってたよ……みたいな内容。作者が学者だからそりゃまあ面白半分で極端なことは言及できないのだろうけれども、まあそのせいでちょっと面白味が薄いよねー、とは思う。快感を得るほどどんどん鈍くなっていくのはドラッグでいういわゆる耐性の問題だよねーとか、まあ大体予想できる感じである。

しかしまあこれはコロンブスの卵的な発想かもしれず、この本の「人間は現実に紐付いていない空想だけで快を得ることができる」ってのは、そんなん当たり前じゃん! といってしまいそうだけれども改めて考えるとすげーことだよなあ。でもそれは、かなりの実験で最初に食事だのドラッグだのの物理的な快楽に紐付けられているわけで、やはりそういう抽象化による因果関係の発見こそが生存に有利に働いたんじゃないか、みたいなことは考えるよね。そしてその因果関係への追及は、今だとやはり陰謀論とかを連想してしまうわけで、ある種の「物語」を我々がどう扱えば良いかというのは課題に思えるなー。

まあしかしこういう仕組みを見れば見るほど「人類滅んでも良くね?」とは思うよなー。ボタンを押し続けてそれが快感に繋がって人間の数が減ってそれによって地球の生態系が保たれるんだったらまあそれも選びうる未来のオプションのひとつじゃねーの? くらいの気持ちにはなる。