このエピソード自体はドキュメンタリーで知ってて、「こりゃ映画化決定だな……」なんて思ってたんだけれども、まさか本当に映画化されてるとは思わなかった。そしてまあ映画になったら「映画化失敗だな……」と思ってしまった。だってこれドキュメンタリーの方が全然面白いんだもん。
いや、もちろん色々工夫しているのはわかるんだよ。なんだかんだ言っても史実の筋書き自体はまあわかりやすい感じではあるので、そこは普通にスルッと描いて、夫婦の危機に焦点を当てて、人間の善性とはなにかをテーマにしよう、という試み自体はわかる。わかるんだけれども、うーん……現実がすごすぎていまいちそっちのドラマがピンとこなかったかなあ。だって、我々は史実を知っているワケで、この映画では省略されているゲットーの悲劇的な生活とか、その後アウシュビッツやらダッハウやらに送られて行く未来をボンヤリ知ってしまっているわけで。年が字幕で出る度に「うおー、まだまだ解放が先過ぎて辛い……」みたいな気持ちになるわけで。そんな中で、浮気を匂わせる夫婦の危機を描かれても、うーん、あんまりピンとこないよなあ。
隠し事をする話なんだから、隠し事がバレそうになってハラハラドキドキ……みたいなシーンをもうちょっとちゃんと描けば良いのになあ、とは思った。そういうのって、なんだかんだいって大事だと思うんだよなー。