うーん、後出しジャンケンになってしまって大変ズルいけど、でもやっぱりこの本が人間としての橋本八段の軽率さを露呈してしまっているよね……。いやまあ、発言が大きな影響を持つにも関わらず、Twitterでいきなり三浦九段を糾弾したのははっきりいってあり得ないと思うんだけど、この新書でも「このような処分があるからには決定的な証拠を掴んでいるに違いない」という、一般人と全く変わらない想像で断言して論を進めてるものだから、うーん、それはさすがに説得力がないというか、思い込みと決めつけが過ぎない? と思う。結局仮定が間違っていたことが明らかになった今から振り返ると、ありえないよね。というか、三浦九段の名誉回復を本気で考えるなら、この本は絶対に絶版にするべきじゃないのかしら。
終始語られる「将棋は斜陽産業」というのも、いやまあホントに後出しでアレなんだけれども、今から見るとお笑いぐさだよね。あんなに敵視していたインターネットの将棋中継がきっかけに裾野が広がって、藤井聡太四段と加藤一二三九段をきっかけに、空前の将棋ブームなワケじゃないですか。もちろん間違いは誰にでもある話だけど、ここまで正反対のことが起こってると、思い込みと決めつけで描かれた価値の薄い本、という評価にならざるを得ないよなあ。引き合いにスポーツ選手のドーピングを出したときも、全く調べていないイメージでの言及だったときは本当に呆れたよ。調べればわかることを調べる手間もかけてないって話でしょそれ。
コンピューター将棋との向き合い方も、一般の将棋ファンとは隔離がありすぎて、うーんこの考え方をする棋士がいるのはわからなくもないけど、でもあまり一般的じゃないだろうし、こんなこと言ってるから斜陽産業になるんじゃん? とは個人的に思うなあ。
まあ、色々一生懸命色々考えていると思うし、橋本先生みたいな棋士がひとりくらいいても良いとは思うし、別に嫌いとかそういうわけではないんだけど、この問題に対して新書を書くにふさわしい立場の人には思えなかった。