ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

真剣師小池重明

 

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

 

確か小池重明のドキュメンタリーはだいぶ前にテレビで見た気がするんだけど、そもそも真剣師自体をそこまではっきりイメージできてるわけではなかったので、まずそこが興味深かった。『5五の龍』だってかなり誇張されて描かれてるっぽいしね。『ハチワンダイバー』と前後して読んだので余計に面白かったのもある。

そもそも団鬼六の本ってコレが読んだの初めてかもなあ。SMとかの書籍で有名なひとだけど将棋も強い、ってくらいのことは知っていたけど、将棋ジャーナルやってたくらいだったのか。真面目な将棋ファンに対してどうやって振る舞うかにいちいち頭を悩ませてるのが面白いし、あー将棋界ってある種のムラ社会なんだなあと思わされる。やっぱ将棋ばかりに没頭した人間が集まる場所だから当然閉塞しちゃうよねえ。

ところがこの小説なんだけれど、ある種将棋からは距離を置いていて、人間小池重明を描くところに注力しているのがすごいなあと思う。下手に将棋が強いと、彼の指した手が如何に素晴らしいかを伝えようとかしちゃいがちじゃないですか。まして彼の将棋はプロをドンドン打ち負かしちゃうくらい一級品だったわけでしょ? でもこの小説で描かれる将棋の強さって、かなり小池重明って人間ありきで描かれていて、その詳細には踏み込まずイメージで伝えることを徹底してるんだよなあ。

で、まあ本人もかなり書いてるんだけど、その描写はどう考えても人間小池重明の魅力がもたらしたものだよねコレ。棋士として一級品の才能を持ちながらも、女と金で身を持ち崩してしまった憐れな男。将棋そのものよりも、むしろそんなどうしようもない人間の一生への興味がこの本の根本の動機にあるようで、いやあ魅力的な本だなあと思いました。