ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

マイナス・ゼロ

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

最近別に何かを意図したわけでもないのにタイムマシンづいていて、そういうテーマの小説をたくさん読んでいるのだが、そんな中でもかなり変な小説である。

タイムマシンもののマスターピース、というのはわかる。戦前日本の細やかな描写にノスタルジーをかき立てられる、というのもわかる。時間を飛び越えた一大ラブロマンス、というのもわかる。それぞれが魅力的なのも非常によくわかる。
わかるんだが、しかし、その全部が、なんかちぐはぐというか、焦点が定まっていないというか、まあ収まりが悪いのである。

登場人物が魅力的なのはもちろん間違いないのだけれども、一番生き生きと描写されている人物がカシラっていうのがそもそも変で、時空を超えてすれ違う男女の恋愛を描くぜ! っていう感じにはたぶんなってない。そもそも収まりの良い恋愛タイムトラベルものにするんだったら、あんな奇妙なループを作り上げる必要は全くないわけで。

昭和の描写の魅力とタイムトラベルというギミックの持つ魅力が、筆先を誤らせてしまった感じ。だがしかし、そのいびつな形こそが、作品全体を輝かせているようにも感じられるんだよなあ。