ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

クローバーフィールド/HAKAISHA

クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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エンディングで流れる音楽を聴くまでもなく、これはまさしくハリウッド版の「ゴジラ」だ。決して911以前にはとられることのなかっただろう内容は、テーマをあからさまにしすぎな印象も受けるものの、エンターテインメントとしても良くできていると思う。

この映画がゴジラと大きく違うのは、怪獣の立ち位置だ。
ゴジラ」がいわゆる「核の落とし子」として描かれているのは有名だが、この「HAKAISHA」は「911の暗喩」だ。しかしその両者が観客に与える印象は、微妙に違う。
「HAKAISHA」は機密テープによる回想シーンという形で物語が始まる。「HAKAISHA」による災害が、人間の手により終息させられることが、あらかじめ暗示されているのだ。そのせいもあって「HAKAISHA」は規格外の力を持ちつつも、一応は物理的に説明可能な「生物」として描写される。
ところがゴジラはどうだろう? 山の向こうから、のっそりと顔を出すゴジラの登場シーンは、神々しささえ帯びていなかっただろうか。空想上の新兵器を持ち出すまで倒せるかどうかもわからない破壊の象徴。ゴジラはある種の「神」なのだ。
それは同時に、それぞれの作品が象徴をどうとらえているかを表してもいる。「ゴジラ=核」は人間の手を離れた恐怖だった。だが「HAKAISHA=911」はあくまでも、調伏されることが予測できる存在なのである。
そうやって考えると、この作品が個人のビデオカメラ視点で物語が進むことも納得がいく。この映画は、絶対的な恐怖としての「怪獣(=核)」を描くのではなく、「怪獣(=911)」への報復の過程で犠牲となった人間の悲劇を描く作品だ。


以下雑感。
・死亡シーンのフォーカスが自動で切り替わるシーンが美しすぎるわ。
・上書きテープのアイディアは一本! という感じ。だがもう少しラスト工夫できた気もする。