ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ

 

GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ (角川文庫)

GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ (角川文庫)

 

『怪獣黙示録』もだいぶ傑作だったけど、まさかそれを超えてくるとはなー、いやー正直全く想像していなかった。

今振り返ると前作はまあまあWWZからの着想って感じで、すると世界のどこにどんな怪獣を置いてそれがどんな文化的バックグラウンドと組み合わさって面白味を出して、という縦よりもむしろ横の勝負で、その横を怪獣のレパートリーで補っている感はあったんだなあ。ちゃんと土地土地と怪獣とでアイディアの妙はあったんだけど、そのアイディアが短編の読み物としてどこまで優れているかというと、もうちょっと! もうちょっと! という感じのところもあった。まあそれは分量もあって紋切り型のキャラクターでザッピングしなきゃならないのもあるからどーしょーもないのだろうけど。

一方今回の『プロジェクトメカゴジラ』は、もう「ゴジラ」というこれ以上なく強烈な縦糸が一本ピシーっと通ってて、しかもその一本は現在・あるいはアニメ版への未来へと続く敗北への一本道で、でまあその一本道がもうこれ以上なくドえげつなくひどい感じで描かれていてうーんすごい。ゴジラが戦争とか核の悲劇とかを下敷きにして生まれた作品だとしたら、この小説も間違いなくそういった悲劇の延長線上に存在している感じ。ハリウッド映画とかじゃちょっと無理ですよねー、という類の。

そして何より心を強く揺さぶられたのは最後のモスラの下りで、映画ではあんなにも「なんだこいつら?」としか思わなかったあの宗教的な対象に、この小説の短い一節でめちゃくちゃ感激して神の威光みたいなのを感じてしまうのだった。無慈悲な暴力に蹂躙された描写が重ねられた後だからこそ、その暴力からの救いには慈悲を感じてしまうなんて、いやまあ理屈的にはわかるんだけど我ながら単純で笑ってしまう。でもなあ、それをちゃーんと感じさせる丁寧さだったんだよなあ。

いやあ、傑作。