ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

妖神グルメ

 

正直菊地秀行ってちょっと上の世代って感じで、自分は余り馴染みのないところがあるのよね。自分が小説を読み始めたのって、いわゆる「ライトノベル」がレーベルとして認知され始めた後で、ソノラマ文庫とかはちょっと前の世代って感じ。なので月姫とかそういう伝奇の影響を受けた小説は、正直ちょっとピンとこないところがある。菊地秀行も、多分ちゃんと呼んだのって数冊くらいじゃないかな……記憶にないくらい。

でまあ、クトゥルフ神話ものを読んでいることもあって当たったんだけど、いやー、なによりこのスピード感にビックリするね。一冊で今の時代でも、ここまで行間を省略した小説ってなかなかないんじゃないだろうか。マンガだったらまあわかるんだけれども、強烈なキャラとミリタリーのおいしいところとクトゥルフ神話のバックグラウンドを自在に操って、ストーリーを切り詰めるだけ切り詰めて一冊の小説で料理しちゃうのは、いやーなんか呆気にとられますね。いや、本当に驚いた。所々、もっとたっぷり読ませてくれよーと思ったり、省略しすぎてあれ? と不思議に思ったりしたところもあるけれども、クトゥルフ神話を題材にしているのもあって、その唐突ささえプラスに働いているよなあ。

特に、小説で「美味しさ」をどう表現するかというのはなかなか難題だと思うんだけれども、この作品がとってる方法って潔いよねえ。例えばグルメマンガって、味わった人間のリアクションがいかに優れているかってのに注力したりするわけだけれども、この小説の力点は、むしろイカモノ料理の調理パートの方にこそあって、味の表現はどうでも良い。その分、料理の効能みたいなところはバリエーションが作ってあるけれども、インフレさせていける方向のやり方じゃないから、このくらいで話を閉じておくのはスマートな解決法なんだろうなあ、とは思いました。