いや、シンプルな話だけど、それだけにストレートに音楽に没頭できて結構夢中になってみてしまいました。電子音楽の黎明期、というだけでもなかなか貴重なのに、それを女性の視点から描くというのがめちゃくちゃ面白いですね。というか、巨大なミキサーやらサンプラーやらを目の前に、1人で音楽を作っていく女性の姿を見ているだけでも、だいぶ眼福感がありますよ。後半のストーリーの中で、部屋にずっと籠もりきりというのが示されたけれども、それもポイントだよなー。籠もりきり……といえども、きちんと朝に目覚めて運動をして人を招いて、ある程度文化的な活動を行いながら、自分の信じる音楽に打ち込む……というのは、ある意味クリエイターの理想の生活ではあるよなあ。
クラフトワークの名前さえ知られてないんだから、電子音楽なんて軽んじられて当然だったのだろうけれども、そこに女性が挑んでいくんだから、そりゃまあ多重に苦しむ立場よねえ。共作でどんどん音楽が出来上がっていくパートが大変素晴らしく、なるほどこういう体験ができたらそりゃ創作なんてやめられんよなあ、と思わされるだけの説得力があっただけに、主人公の落ち込みにも共感してしまうよねえ。その後の立ち直りの展開含めて、もの創ってるひとにはだいぶ身につまされる内容、とは思うけど、この主人公はそこに女性ならではの社会的状況が加わるからなあ……