「キューブリックに愛された男」で、まあたぶんこういうコトされた人間がいるだろうなあとは思ったけれども、実際にその人のドキュメンタリーを見ると「ああ……」という気持ちになるなあ。向こうはまだちょっと相対的というか、距離があったからこそ比較的冷静な見方ができていたけれども、こっちは自らその関係性に身を投じた人を描いているんで、描かれていないことの方に思いを馳せて「うーむ……」という感じにはなってしまうなあ。もちろんこういう人がいたからああいう才能が活躍できたのはわかれど。コレはもう間違いなく生存バイアスで、キューブリックのせいで人生を滅茶苦茶にされて再起不能になってしまった人だってたくさんいただろうからなあ。ハートマン軍曹の役を降ろされた人ですら、インタビューがめちゃくちゃキツそうだもんなあ。家族だっていいたいこと山ほどあるよなあ。
そしてこの人がなぜこういう行動に耐えることができたのか……という回答で、突然少年時代のDV経験が出てくるのは本当にキツすぎる。マジでキツい。ジャック・トランスモドキのメモ帳だってさあ、あれ本来肯定的に見せちゃいけないものだよねえ。
いやまあ、歴史的背景とか評価からいって色々難しい題材なのはわかるけれども、しかしこうなんつーか、厳しい気持ちになるドキュメンタリーではあった。