こ、これは……凄まじい納得感。そうかー、マイケル・ムーアはこういう所から出てきたんだね……
今のマイケル・ムーアのドキュメンタリーって、だいぶプロパガンダ要素が強いというか、主張がめちゃくちゃはっきりしていて、権力者に対して怒りを抱きはっきりとNOを突きつけている感じがするけれども、この映画はそうじゃないよね。マイケル・ムーアは困惑している。そしてその困惑を、洒脱な編集でユーモアたっぷりに映像化している。彼の出自がはっきり描かれていることも含めて、ものすごーくプライベートなフィルムって感じがするよなー。
でもってよくもまあこんな素晴らしい素材を手に入れたよなーと言うところがてんこ盛り。というかうさぎを売ってるあの人、よくもまあ引っ張ってきたよなー。うさぎを殺して皮を剥いでいくあのショッキングさが、おばちゃん方のゴルフとかに対置されるわけでしょ。いやー。
そしてGMと労働運動からフィルムを始めるのも本当によくわかってるなーと思う。流れ作業で資本主義社会の発展を決定づけたアメリカの自動車生産(あれはフォードか)と、それに対抗する労働運動の軸を最初にポーン! と置いておいて、そこから資本のグローバル化によって労働運動が成立しなくなっていくところを抑えている、というかむしろそこしか描いてないこの潔さよ。
まーその、ラストのクリスマスの演説とかは、もうやりすぎかもしれないけれども、あのスピーチの内容を聞くともうあそこまでやり過ぎないと駄目なヤツだよね。ほんとうに素晴らしいドキュメンタリーだと思います。