入りの発想は大変良くて、あーなるほどこれならまあありえるかも、というギリギリのセンを突きつつ、ストーリー上の驚きにあたるものが神の偶然ではなく論理的に仕組まれうるものである……というところにきちんと説得力があってまあ素晴らしいと思います。今まで見た「ネット」をテーマにした映画の中でも1、2位を争う納得感がありました。主人公の立ち位置もちょっとだけ捻ってあって、都会で輝きを得ていく主人公にスムーズに感情移入できて素晴らしいです。具体的にどれだけ格差があるのかはよくわからんですが、フェリーで通学みたいな肌感は素晴らしいなーと思います。
ただ問題なのは後半の展開で、もちろんストーリーがエスカレートして何らかのカタルシスに向かわなきゃならないのはわかるんだけれども、ハッカーの都合良さとか警察の不自然な不介入だとか囚人のあれやこれやとか、さすがにちょっと段取りが足りないかなーと思いました。クライマックスの舞台も若者たちの欲望のなれの果て、夢が覚めて正気に戻る……みたいな展開はちょっとノスタルジックですらありますね。あそこはもう国家とか大企業がコントロールして、しかもそのコントロールしている人の顔も見えないとか、そっちの方に振ったほうが良かったんじゃないかなー。フェイクニュースがどうこう言われてる今、集団の意識の向こうに仕掛け人をみないのはむしろイノセントだなーと思いました。