- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2002/11/22
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ああ、傑作すぎて辛い。
中国の映画で第二次世界大戦中の話でエキセントリックな日本兵が出てきて、農民の主人公は日本兵に仲間を殺されながら復讐を果たすんだけれども結局最後には日本兵から斬首されてしまう……という筋立てだけをあげるといかにも「日本兵憎し」のプロパガンダ映画、になりそうなところなんだけれども、見終わった時の感想はそれからはほど遠いというかなんというか。あー、えー、なんなんだこの感情は。
なんだかわからないうちになんだかわからない人から日本兵を匿えと命令され、そこから始まる村ぐるみの努力、という導入がまあともかく素晴らしい。
感情のぶつかり合いと抜群の切れ味のユーモアを交えて捕虜と村人に生まれる交流、しかし拭えない疑念、という一連の流れで、もう、スクリーンに釘付けである。
で、そういうエモーショナルな交歓に読者を引っ張っておいて、突然やってくるあの破局。
何が凄いかって、この映画って戦争映画であるにもかかわらず、あの瞬間まで人が死なないんだよなあ。あれだけ「人を殺すこと」にこだわりながら、映画の最後、玉音放送を終えて人殺しの理由がなくなってから初めて殺戮が始まるという、すげえ脚本。
「カタルシス」とは、まさにこの映画のあの瞬間のために使われるべき言葉だと思う。
ラストシーン、斬首される主人公の首に這うアリ。日本兵はそのアリを追い払う必要はまったくなく、一緒に斬り殺しても誰も文句を言わないのに、わざわざそれを払う。そのシーンを見て、「ああ、これは単なるプロパガンダ映画じゃあり得ないよなあ」と深く溜息をつくのだった。
以下雑感。
・演出がすげえ。ラストはもう拍手が止まらなかった。
・じじいがいい顔過ぎる。あと武術の達人過ぎる。爆笑。
・ロバのスローモーションにあふれる才能。たまらん。
・日本兵の隊長さん、名前を聞いたことがないけれども凄い迫力。