ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

地獄のヒーロー

 

地獄のヒーロー

地獄のヒーロー

  • チャック・ノリス
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「チャック・ノリス vs 共産主義」を見てへーおもしれーとは思ってたんだけど、肝心のチャック・ノリスの映画ってそんなに見てないのよね。スティーブン・セガールとかもほとんど見てないので、一応押さえておかなきゃ、とは思うんだけど……

ほいでこの映画はチャック・ノリスの代名詞なワケね。 キャノン・フィルムズのドキュメンタリーもちょうど見ていたから、あーなるほどこういうノリで作品がつくられていたんだねーと納得。

しかしまあ、映画自体はそんなに特筆すべきところあるか? という感じはするかなあ。アクションもそんなに洗練されているようには思わないし、キャラクター造形も魅力的か? というとよくわからん。まあ時期的に、アメリカはベトナム戦争の傷が癒えていなかっただろうし、そういう中でこういう愛国心に訴える作品がヒットしたというのは、理屈としてはわかるけれども。

まあ、筋書きとしてはそりゃあランボーとか思い出さざるを得ないよね。ロッキーもガンガン愛国心に舵切りするわけで、やっぱり80年代のアメリカの空気ってこういう感じだったんだなーという印象で作品を見終えたのだった。

さらば、わが愛/覇王別姫

 

なんだこれ。傑作すぎるだろ。

まず同性愛を描いた作品として演出がキレキレなのがあって、随所に男根のメタファがズガンと描かれてて参っちゃうよね。煙管を口に突っ込まれるところで血が出たり、スッポンの首を斬って微笑んだりと、いやこれさすがにやり過ぎだろ!? と思っちゃいそうなシーンも、その直球の演出にただただ打ちのめされるしかない感じ。

ただすごいのは同性愛だけじゃなくて、ふたりとその周囲を巡る人間関係のドラマになっているとこだよなあ。師匠の呼び出しのやり取りはもう面白すぎて仰け反った。菊仙と蝶衣の関係の変化だけでも、ラストの破局含めて、ほんと最高に良くできてるよなあ。

またその人間関係が、中国の激動の歴史と大きく相互に関連して動いているのがめちゃくちゃ良くできている。こういうのはちゃんと歴史が頭に入っていてよかったなーって感じ。日本軍に占領された時、敵の大将を「芸術を理解する者」として描いていたところも印象深いよなあ。それと対比して文革の体制が芸術を弾圧する側になっていたのは、当事者の強い意思を感じさせられる。

で、それがさらに京劇をテーマとしたメタ構造に収まってるわけでしょ? あのラストなワケでしょ? いやー、なんだよこの神がかった脚本は……今まで見ていなかったことを激しく後悔しましたよ。すごい。

実録ブルース・リー/ドラゴンと呼ばれた男

 

これは映画なのか? テレビっぽいつくりではある。

なんか最近、世界サブカルチャー史で「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」がわりと批判的な視点で語られていたのもあって、ブルース・リーのドキュメンタリーを見ると、タランティーノの演出がますます「うーん」って感じに思えてしまうな。世界サブカルチャー史では、ヒッピーが悪として描かれていたことに対する批判だったけど、ブルース・リーのこういう背景を見ると、やっぱりもうちょっと描き方はあったんじゃねーのかなあ、って感じはするよなあ。まあそもそも、ガンガン路上で道場破り仕掛けられる状況だった、というのがちょっと想像の斜め上過ぎるわけではあるけれども。

しかしまあ、迫害されていたマイノリティが夢を掴むが、その反動で精神に負担がかかり薬物で命を落とす……というストーリーにどうしてもなってしまうよなあこれは。武術を嗜んで精神修養しても、そうなってしまうんだなあ。幼い頃からショウビズの世界にいたっていう状況も、うーんいかにもスターって感じ。息子が不慮の事故で命を失ってしまうところも含めて、なんかちょっとできすぎていて怖いよねえ。

処刑人

 

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  • ショーン・パトリック・フラナリー
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わはははは、そんなのアリか。いやー、なかなか小洒落てて面白い話よねえ。時間軸をパンと飛ばして、検証の回想で事件を見せるというのは、時間軸の省略ができるし、意外なキャラクターも出せるしで、かなりイイカンジに機能していると思う。このくらいの塩梅で興味を引けたら最高よなー。

と思ったら、ラストで急にこっちに問いを投げかけてくる形になるのもなかなか気が利いていて、まあああいうのがあると「名作」の括りに入りやすそうだなあ、と謎の納得をしてしまう。あんな直接的に、視聴者に物語の結論を投げ込まれると、そりゃまあ考え込まずにはいられないよねえ。露骨だけど効く。

ノーマン・リーダスってデスストで認知して、他にあんまり印象ないなーと思ってたんだけど、なるほどこの映画を見たら印象に残るかも。他になんか見てたっけ? とおもったら、あー、ヘルヴァ・ボスにも出てたのね。さすがに声だけだとわからんわ。

まあでも役者で言えば、ウィレム・デフォーがおいしいところを持って行きすぎではあるんだけど。謎のクラシック推理からの同性愛からの女装って、いやまあ今見るとかなりステレオタイプで危なそうな感じもするけどね。まあ、FBIウィレム・デフォーならしょうがないか、という感じはある。

ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録

 

「トロピック・サンダー」で弄られてるやつの大っきな元ネタだよね? そりゃまあやばい内容なんだろうなあとは思っていたけど、いやー、想像以上にヤバかった。コッポラが映画会社つくって色んなことをしてたのは、他のドキュメンタリーなんかでちょくちょく出てくるし、ジョージ・ルーカスと監督を入れ替わった経緯とかもなんだかんだ聞いていたりしたけれども、いやはや、まさかこんなことになってるとは……

いやでもなにより、この映画をなんだかんだ撮りきって、それでちゃんと世界的な評価に繋げているのがやばいよなあ。普通こんな企画、どー考えたって暗礁に乗り上げて失敗するに決まってるじゃないですか。規模は違うかもしれないけど、「ロスト・イン・ラ・マンチャ」なんかが頭をよぎっちゃうよねえ。いやはや、本当にこの頃のコッポラ監督って神がかってたんだなあ……

あと、ロバート・デュヴァルとかデニス・ホッパーとかマーロン・ブランドとか、まあ役者の振る舞い見てるだけでくっそ面白いわなー。っつーか、主演はチャーリー・シーンのオヤジさんだったのね。最初見間違えちゃったよ。

あとまあ、こんな環境で幼少時を過ごしたら、ソフィア・コッポラもそりゃあちょっと普通の人と違ったモノの見方になっちゃいますよねえ。

ソニック・ザ・ムービー

 

いやー、さすがにシナリオが観客を舐めすぎてはいやしないだろーか。

そもそものテーマが「その能力故に孤独にならざるを得ない」というところなのに、それをこんな雑に解決するのってさすがにひどすぎるでしょう。せめて身内がもっとひどい目に遭って、それでソニックがひとりで活動することを決意する、みたいなパートがあってしかるべきプロットじゃないのコレ?

最後のスーパーパワー謎の覚醒のどうでも良さも本当にビックリしたけれども、ソニックの能力が強力すぎるからこそ、バランスよくそのバトルを描くことにもかなり苦労しているよね。最初の麻酔ハンデの無理やり感もヤバいけど、ラストバトルがなんであれほど互角に成立しているのかほんとよくわからん。ソニックが時間を引き延ばせるのって、アレ明らかに物理法則に干渉していると思うけれども、あの毛一本でデンキビリビリしたところで、それと同等の力がメカにも備わっちゃうわけ? さすがに説得力ないよなあ。

あとまあ、なんか敵役が謎のフィーチャーされてんな、でも動きはキレキレだしなんだろな、と思ってたら、あー、ジム・キャリーか! なるほど言われてみれば納得、なんだけれども、ジム・キャリーはやっぱり顔芸で認知してんだなあ。英語が聞き取れると、その口調なんかでわかったりするのかしら……?

ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男

 

全然ファッションに興味がなかったんだけれども、最近ようやく少しずつ見られるようになってきた気がする。少し前はファブリックといわれてもそもそも何を意味するか全然わかんなかったのが、今はちゃんと生地に注目して物を見るようになった程度だけど。

でもこのドキュメンタリーは、ファッションその者と言うよりむしろファッションショーを軸にデザイナーが描かれていて、それだけでも全然見やすい。ファッションを単に人の衣装だけではなく、ああいう風に舞台装置含めて何かを表現するアートとして示せてもらえると、なるほどそういう文脈でコンセプトを表現しようとしているのだな、というのがわかりやすくてとても良い。いやもちろん、アートそのものが孕んでいる文脈みたいなのがあらかじめ頭に入っていた方が、面白く見られるんだろうなーって気もしたけれど……

あと、ああいうインパクトを与える衣服をデザインしているデザイナー本人の衣装がシンプルだったのがなんか印象に残った。なんかファッションショーで最後に出て来るデザイナーって、すごい外見って印象だったので。