ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

英国総督 最後の家

 

英国総督 最後の家(字幕版)

英国総督 最後の家(字幕版)

  • 発売日: 2019/02/21
  • メディア: Prime Video
 

いやーさすがにラストは笑う。あの偶然をアリにすることで物語的なカタルシスを担保させちゃうのはマズくねーか。印パ間の紛争の原因を作ったイギリスの画策をこんな作為的なエンタメ的結末で「良かったネ」って結末するのキツすぎるでしょ。しかもそれがヒューマニストの主人公が自らを犠牲に捧げてる現場で起こる、という立て付けなワケでしょ? 印パの暗喩である2人の悲恋に一生責任を負っていかなきゃならないストーリーでしょどう考えても。いやー、エンタメの圧力に負けたって感じだよなー。

まー植民地支配をテーマにした作品なのでイギリスはクソだなーという結末にならざるを得ないのはしょーがないよねーと思っていたが、チャーチルの陰謀は想像していた以上にクソな結果を導いていて本当にビックリした。いやーホントにやべーなイギリス。

ところで映画の「ガンジー」で、なんだかんだヒンズー教徒とイスラム教徒の関係が曖昧だったので、おーなるほどこういうことだったのかーと実感したというのはある。宗教対立があったといっても、結婚とかどーなのとかそういう肌感覚みたいなのは想像がつかないからなー。あとバングラディッシュって昔は東パキスタンだったのか。なるほどねー。

ノア 約束の舟

 

ノア 約束の舟 (字幕版)

ノア 約束の舟 (字幕版)

  • 発売日: 2014/09/10
  • メディア: Prime Video
 

いやーこれは難しい話だなー。

箱船という人類の俗悪から逃れたはずの場所で、神と人間の価値観のぶつかり合いがより鮮烈に出てしまうという状況設定は、まあ確かに魅力的に思える。神の啓示のような一見不可解なものが人類の普遍的な愛・憎しみと対立してという構造がミニマムに箱庭空間で提示され、しかもその父=神の代理人たる存在がラッセル・クロウっちゅーのはまあ大変吸引力のある立て付けである。のでまあ、そこの理不尽感はそこまで嫌いでもない。

しかし根本的にはやはり全然意味わかんねーというのが正直な所であり、神の存在が身近なキリスト教的な視点から見るとこれはしっくりきたりするのだろーか。しかしラジー賞とかとってるっぽいしなーなんの問題もなくこの問題設定を受け入れられる感じにも思えねーよなー。状況説明のためなのはわかるが洪水が来るまでの出来事がもう本当にどーでもよく、ああいうふつーのCG映像で神の啓示を正当化されてももう全然その立場を尊重できないよなー。

あとラストで父を許してしまうのがえーそんなかんじでいいの? という気がするのもたぶんそこが問題で、あれって神の啓示に昏倒せざるを得ない父・夫に感情移入の余地を強く入れとかないと成立しないと思うんだけれども、そこがもう全然足りなくてなー。DV夫に騙されるパターンじゃないのかなーと思いました。

一人っ子の国

 

まー中国で一人っ子政策やってたらこういうことやってるよねーという予想がまんま当たる感じの映画であり、まったくもって意外性がなく、しかしその意外性のなさがしんどいなーという感じであった。意外性を感じたのはアレか。「自転車を乗り回してると数人は捨て子が見つかる」ってやつか。そこのディテールはさすがにビビる。

あとラストで中絶できない国との対比になってるのは、あーやっぱりそのアングル持ち出してきたかーとなった。そもそもこういう図式が念頭にあるから、中絶が悪という見立ては全然ピンとこなくて、作中でも触れられていたけれども「人々・女性の権利が奪われた」という問題に落ち着くんだよなー。そうすると中盤の芸術家の、堕胎そのものが罪みたいな見せ方はちょっとしっくり来ないなーと思ってしまうのだった。

と冷静に見ていられるのも多分自分が子供を持っていないからで、やっぱり子供を持っていたりするとそういう風には見られないんだろうなー。

そういう意味では一番ズシッときたのは助産婦のエピソードで、当事者として堕胎を罪と感じているというのがしんどいし、その自ら冒した罪を不妊治療で贖っているという説得力がすごい。そしてそれに助言したのが108歳の僧侶というのも「中国!」という感じ。

尋問

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うーん演出。こういう事実を元にして不正を糾弾する映画が、わざとらしいライティングやスローモーションで演出されるとずいぶん心が冷めてしまうけれどもそれってだいぶ損だよね。事実に基づいた、と言ってるんだからもっとふつーに演出してもちゃんと意図は伝わるでしょ、と思う。

というかこの映画の筋は、もう現実に偶然起こった出来事の連鎖がすごすぎて、映画がそれについて行けてない感じがすごくするんだよなー。もちろんバックグラウンドもわからないので後半に起こった事件の細部がよくわからんという問題もあるんだけれども……実際、序盤の尋問だけでもそこそこちゃんとした告発になる題材なのに、後半でさらにあんな事件が待ってるなんてねぇ。しかしだったらこの題材をどういう視点でどういう見せ方をすれば面白さが立ったんだろうなあ……もう少しそれぞれの仲間の個性を立ててあげた方が良かったのかなあ。恋人とかあのあたりの描き方の問題なのかなあ。

ガガーリン 世界を変えた108分

 

うーん全然面白くねえなあ。ガガーリンの神格化映画なのかしら。オレにはなんでこういう映画を作ったのかがマジでよくわかんなかったわ。

そもそもなんでこういう構成にしなきゃならなかったんだろう? そもそもソ連の状況がわかっていないからってのもあるんだけれども、時間軸が言ったり来たりしてガガーリンの半生を振り返る形式をとられても、ストーリーとして捉えづらいというかそれらの断片をどのように宇宙飛行と結びつければいいのかがよくわからない。

さらにソ連という国家の扱い方がよくわからんっちゅーか、フルシチョフがガンガン悪者っぽく描かれているけれどもいやーあの描き方全然信じられないっちゅーか。もうちょい全体的に組織としてヤバいプレッシャーがかかっている状況を描くことはできなかったのかなー。宇宙開発戦争のまっただ中なんだから、その中でガガーリンが人間としてどのように翻弄されたか、むしろエンディング以降の描かれなかった場所の方が興味があるよなーと思う。っていうか既に帰ってくる確率が低いこと前提に飛ばすのはわかってるので、むしろわりと誠実に宇宙開発のステップを踏んでいるように思えて「うーんうさんくせーなー」とか思ってしまうのだよなー。

警察再生

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ブラック・ライヴズ・マターが話題になっているけれども、日本人にはピンとこないその空気感を感じるのにはこれ大変良いドキュメンタリーだと思いました。まあとにかくこの空気感って言葉でいくら説明してもわかりづらいもので、見た方がいいとしか言えないよなー。

映画を見てちょっとだけ思ったのは、警官って常に容疑者の特徴を伝える訓練、してるじゃないですか、「黒人・長身・パジャマ・攻撃的」みたいな。そうやって対象を短い言葉で型に当てはめる作業を繰り返すのって、対象の人権を貶めかねない危険を孕むなーと強く思いました。もちろん、そういった特徴の把握は言語化で避けては通れないわけだけれども、犯罪に日々ふれながらあの作業を繰り返したら、そりゃあ普通の人とは感覚が違っちゃうのも当然かなあ、という感じがします。

あとこの事件の後、っていうか今、オークランドがどんな感じになってるのかなーと思ってググったんだけれども、そこで出てきた記事がDemocracy Now!で、あーこれ『すべての政府は嘘をつく』で見たやつだ! となりました。

独裁者

 

独裁者(字幕版)

独裁者(字幕版)

  • 発売日: 2020/05/21
  • メディア: Prime Video
 

まあ一応見ておかなきゃならんかなーと思って再生したんだけど、いやー、今まで見たチャップリンとは全然テイストが違ってビックリした。美術にめちゃくちゃ凝ってて、力のこもりようが違うよなー。

しかし違うのは力の入れ方だけじゃなくて、全体のテイストもだよねー。ギャグも力がこもってて笑いきれないし、ストーリーも浮浪者パートの書き込みがだいぶ薄い。ヒロインとの繋がりがここまで希薄なのってアリなんだなーとちょっとビックリしました。

そしてラスト、大マジになってヒューマニズムの大演説が始まるわけですが、それまで独裁者のオーバーリアクションを散々弄ってきたチャップリンが、自らの言葉で何かを訴えようとするときに、その素振りがどんどんヒートアップしてヒトラーの独裁者のそれに近づいていくのは、いやあ、ホラーだったなあ。一方、この映画で一番共感が持てたシーンが、地球儀風船で遊ぶ独裁者のシーンであったりと、あー、この映画やっぱ全体的に破綻……までは行かないけれど、だいぶ歪な形をしている作品だよねえ。面白いとは全く思わなかったんだけれども、政治的なメッセージを映画スターがフィクションの形で発表することの意味について強く強く考えさせられる作品でありました。