ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

FAKE

 

FAKE

FAKE

 

すごい映画を観てしまった! 普段まともにテレビなんて観ておらず、佐村河内守のニュースは正直なんとなく聞きかじっていただけで、結果「ああ、あの詐欺作曲家ね」みたいなイメージしか持っていなかったのだけれども、映画中で暴かれる真実には度肝を抜かれた。マスコミによって事実は捜査され、視聴者が求める形に真実は歪められる。世間を敵に回してたったふたり戦う夫婦の姿は大変悲劇的。そして何より映像作品としての手管が半端ではなく、録音をし忘れたことで映された無音の世界を巧みに作品内に取り入れたり、耳の聞こえない人間と目の見えない人間の家族のような交歓が描かれたり、そしてもちろんラストの作曲の下りだったり、いやあドキュメンタリーというフォーマットを活かしてここまで心に響く作品を創れます? この監督が懐に心中覚悟で入り込んだから撮れた映画なんだろうなあ……何より強い夫婦の絆に感動!!

とか、まあ、思っちゃいますよね。というかオレも思っていたラストの一言が出てくるまでは。いやー、ほんとこの監督詐欺師ですよねー。FAKE。っていうか映像の編集ってマジ恐ろしいわ。ホント性悪。作曲を引き出すために煙草を犠牲にするとかそういうリアリティも上手すぎて、いやあ、これはリテラシー教材として最高じゃないでしょうか。

まあ思い返せばピンポイントで監督上手く色々外していて、曲披露後の「ふたりを撮りたかったんだなと思いました」とかのコメントのクレバーさとかも最高ですね。もちろんかつては作曲していたとか耳が完全に聞こえるわけではないとか、そういう「一分の真実」を含んでいたのだろうけれど。一分の真実を正当化するうちに暴走して(あるいは世間に対抗するために暴走を余儀なくされて)、自分たちにも押しとどめられない「真実」な物語になっちゃった様子を、その内側に飛び込んで撮るとか、いやあ、ほんとすごい仕掛けだよなあこの作品。そして完成した作品が、ただ誰かを騙しただけではなく、むしろその仕組みの中から真実/嘘とはまた別の価値をきちんと掘り出せているのだから。いやー、すげえ。