ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

そして父になる

 

うーんこれがなんでこんなに面白いのかわからんが面白い。なんでだろう。

劇的なシーンはない。うまいなあという描写は多々あって、ストローの先っちょやら家族写真の対比やら風呂場の胸押しやらなんやら、ほんと感心するけどさりとてそれが劇的にストーリーに寄与しているかというとそうでもない。台詞もうまいがそれ以上に語られない部分で物語が展開している。

あるいはその空白こそが魅力なのだろうなあ。「家族」へのコンプレックスが、直接的には1シーンでしか語られないけれども、でもはっきりと物語の根っこに敷かれている。断片的に語られる主人公の過去が、息子への態度に対するある種のミステリのように機能していて、興味が最後まで尽きない。『そして父になる』というタイトルは、うまいことテーマを指し示しているよなあ。

 

それにしても、大手ゼネコンに勤めるタワーマンションからの眺めで現代日本の家族を語ろうとする試みはメチャクチャ面白いなあ。もう一方が地方の電気屋で大家族というベタベタな設定でアレな感じもするけれど、役者の芝居や作品中何度も繰り返される「移動」のシーンや、細かな言葉のアクセントの差違などが効果的に効いていて、そんなに変な感じはしない。ってかそもそもそこら辺は大いに戯画的に描いているのだから、むしろこのくらいの塩梅でベタさを抑えられたのは、さすがだなあと言う感じなんだろうか。