ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか

 

いやはやタイトルと表紙から想像したものとは全く違うものを読まされてビックリしたよ。だってこの見た目で戦前の日本の冤罪について延々語られる内容だとは絶対思わないじゃん。別に嫌いな内容じゃないんだけど、内容が多岐にわたっているというか、既に前提を知っている人向けみたいな感じになっていて、戦前の警察組織なんて『インビジブル』くらいでしか知らない自分にとっては、もうかなーりしんどかったよ。最初の事件は状況からキッチリ説明してあって読み応えがあったけれども、進むにつれて話は色々脱線するし、よく分からない人がたくさん出てくるし、しかも語り口はかなり大仰だしで、うーん自分には向かない本だなーって感じ。

でもって一番知りたかった普遍的な道徳感情については、それこそ作者の飛びついたストーリーって感じで、実証的でも何でもないよね。後ろに古典は敷いてあるっぽいけれども、それが学術的に立証されているかというと、かなり危ういわけでしょ? 素人が様々な説のいいとこ取りを集めてパッチワークをしている感が大変強く、えーそれって冤罪を招いた人間の誤った認知そのものじゃないの? とゲンナリ。別の本の感想でも何度か書いたけれども、人間は物語から逃れることはできないんだから、必要なのは物語を捨てることではなくて、物語と物語を突き合わせて最も納得のいく物語を追求することではないか? と考えているので、そもそも作者とはスタンスが合わないよなあ、みたいに思った。