ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ペリリュー ─楽園のゲルニカ─

 

あーすごい。これはすごい。うん、すごい。

まず何よりもこのマンガの立ち位置が大変自覚的で良い。フィクションによって過去と現在をどうやって繋ぐのか、繋ぎ得るのか、という問題意識が強くなければこういう導入はできないよねえ。最後の1巻をかけてじっくり接続したのもすごいし、その中でインタビューを断られたエピソードが入っているのも良い。作品の冒頭で「この作品はフィクションです」と強く入っている意味がこれ以上なく重く感じられる。しかも、主人公はいきなり「(虚構含みの)物語によって過去を語り直すこと」が求められる立ち位置だもんなあ……

しかしさらにいいのは、その「語り直すことは罪か否か」みたいなちっぽけな問題意識がどんどん遠ざかって、ただひたすら目の前の問題に立ち向かう所だよなあ。その合間に、決して物語としては回収できない叙情が漏れ出して、ただ我々はひとつひとつのエピソードをありのままに受け止めるしかないよなあ、みたいな気分になる。

いやもちろん、個別の物語化しやすいエピソードも素晴らしいけどね。急にサブキャラを出したと思ったら、まさかこの枠組みで口紅のエピソード差し込むとか思わないじゃん。最終巻で「妻さん」って呼び方も印象に残ったんだけれども、そういう所にきちんと細かな意識を向けられた人だからこそ描ききることができた題材なんだろうなあ、とは思う。