ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ゴールデンカムイ

 

ありがたく全部読んだ。

全体を通してこの熱量はすげーなーと思う。よくこんなん書き切ったよ。偉い。この時代にありえるものを与太話含めて全部ブチ込んだ姿勢は、圧倒的だなあーと思う。あとそんなパロせんでもみたいな物もぜーんぶブチ込んであって、いやー本当にすごい。

一方で構成というか、最初から「殺す/射精するものとしての男」に対比するヒロインを中心にキャラクターを配置している構造もめっちゃ強固で、戦争とPTSDという男性の内面・弱さに対するカウンセリングみたいな構造をとっているのも強い意思を感じるなあと思う。「目から毒を吸い出させる」エピソードがあった後に「殺すのではなくて祝福を与えて自死させる」で決着をつけるのは、なるほどここにこの話は落ち着くのか……という感じ。

ただ一方でその男性的な姿勢の向こうに満州事変が控えている。個々の男性の内面的な弱さのドラマだけではなく、軍国主義・帝国主義的な思想に対して、アイヌ迫害を通じてどういう回答を示すか、が求められてしまっている構造ではあると思う。最後の汽車の駅の形は明らかにペニスだし、その切っ先は間違いなく満州に向かってるわけだしなあ。そこで日本近代化(と敗戦)はなんだったか、という総括がどうしても要望されてしまうが、そこら辺は手が及ばなかったのかなあ……という印象。アイヌをこのような構図で描いている以上、Twitterなんかで見る批判が出てきてしまうのも仕方ないことだろうなあ、とは思った。

また全編を通して結構気になっているのは白石の立ち位置で、彼って誰か殺したっけ? もし男性という属性を持ちながら、不殺を貫いたのであれば、彼が南国の王になったというラストは、単なるしょーもないギャグでもないなあとは考えたりする。