ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

CITY HUNTER

 

なんでか知らんが今のタイミングでシティハンターを全巻読破して、あまりに面白かったんでTwitterに感想を連投してしまった。基本、そっちのコメントの編集だけど…

 

シティハンターは序盤ちょっとそのフォーマットに混乱があって、悪の組織何かを出して麻薬を巡るハードな戦いとかやってたんだけれども、まあ普通に人殺しの主人公はツラいよねみたいな所もあって、軌道修正してゲストヒロインのボディガードものになっていく。そこで冴羽䝤の特徴である「モッコリ」がうまく機能して、ゲストヒロインに一発やりたいという欲望が物語を転がしていくことになるんだが、しかしそこで見られる女性観は最初のうち今の視点から見ると結構厳しい。だって街中で美人を見ると勃起をして女性に飛びかかる主人公、さすがに今見ると厳しいよねぇ。各ヒロインの顔の書き分けが積極的には為されていないのも、彼女たちがある種交換可能な性的記号として登場していることの表れだし、また䝤の欲望の対象が容易にブラジャーなどの下着類に向けられ、生身の女性と同じように機能するのも象徴的。

しかしまあ面白いのはここからで、各エピソードでヒロインたちのボディガードを行うことによって、最初は単に「モッコリの対象」でしかなかったヒロインたちの性格の掘り下げが行われ、彼女たちに内面が与えられる。それに反比例するように、䝤のモッコリ頻度が下がっていく。だいたいひとつのエピソードが終わると、「一発やりたい」という動機でヒロインたちとつきあっていた䝤が、内面を認めてモッコリの対象だけではない人物として、適度な距離感を保つようになる……というのが、基本的な物語のフォーマットになってる。(なおエピソード単体のクオリティは高い)

 

そういったエピソードで長期連載を重ねる上で、俄然キーとなってくるのが䝤の相棒である槇村香だ。彼女は当初、「男にしか見えない女」という、䝤が勃起しない女性キャラクターという特別な立ち位置で物語で機能する。シティハンターにおいて「女性」は正しく=性的消費の対象であって、香はそこに対するアンチテーゼとしておかれているんだよね。

だから例えば、香がカツラをつけて「女性らしく変身」すると、䝤は途端に香にモッコリするし、挙げ句䝤自身もカツラをつけて化粧をするだけで、美女に変身できちゃったりする。この作品においては、「美女であること=性的魅力があること=女としての価値があること」という価値判断が為されているんだよね。

 

ところが連載が進むにつれて、性的欲望の成就をハンマーで阻止する役割しか持たされていなかった香が、エピソードの積み重ねによって内面を獲得し、䝤との恋愛関係を育んでいくことになるんだよね。そこで䝤は香の内面を見出し、ひとりの女性として向き合わされていく……という圧力が生まれる。これがすげえ面白い。

象徴的なのが、香がメイクアップした姿で、自分が自分と気付かれないまま、䝤と一夜限りのデートをするショートエピソード。䝤は美女であるから当然変身した香をデートに誘うものの、香は「見た目/美女としての記号」が引き起こし「内面」を見ていないという理由で、恋愛の成就を拒絶する。これって要するに、作品上では当初から、「女性としての価値」として描かれた「外見の美しさ」が、ヒロインの内面の蓄積によって拒絶された、というシーンであって、絶対に最初から狙得るはずのない地点に到達しており、いやあマジで物語って面白いなーって絶叫してしまいましたよ。

 

その後は翻って、何故香を人間として受け入れなかったのかという問題が、主人公である䝤にも返ってきて、どうすれば主人公に内面を与えられるか、みたいな状況がバンバンやってくる。ここら辺たぶん作者はこの構造を自覚しているよねえ。ゲストヒロインを助けるフォーマットが後退し、因縁の相手が次から次へとやってきて䝤の個人的なストーリーが語られる後半は、テンションがめちゃくちゃ高くて本当に面白い!

最後の部分はちょっと駆け足で、それまでやってきた個人的なストーリーに比べると「これで終わっちゃって良いの?」みたいな部分はあるものの、テーマはきちんと消化している感があって読後感は非常に良い。内面を得たはずの主人公が、何故愛の成就を遅延させていたかという後半最大の謎に、「モッコリで衝動的に行為している自分への批判」という回答が出る辺りとか、いやマジで最高に美しすぎて感嘆しかでないっすよマジで。

 

最近、シティハンターを雑なフェミニズムへの揶揄みたいな文脈で引っ張っているのが散見されるし、たしかに序盤の描写は今の視点から見るとキツいなーと思わされること多かったけれども、総体としてみるとそういった䝤が偏見を解消するまでの物語になっていて(最終版、䝤は美女にモッコリすることをやめている!)、雑な文脈で引っ張られるべき作品じゃないと思います。

 

いやー、何はともあれ面白かった! こんな物語を連載の中で発見していくなんて、今更ながら、ジャンプはすげーなー。