ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ドント・ブリーズ

 

ドント・ブリーズ [SPE BEST] [Blu-ray]

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一部ではだいぶ評判になったワンシチュエーションな映画。

だいぶ身の丈に合っている「映画」で、こういうのサム・ライミ好きそうだよなー。目が見えない老人を活かすアイディアが十全に詰まった90分、予算もキャストもストーリーもバッチリオッケー、って感じ。「外から入りづらい家」が「中から脱出しづらい家」になったり、「視覚を失い不利な老人」が「暗闇の中で有利な老人」になったり、そういうメインアイディアをきちんと活かしたノルマ展開がちゃんと履行されていて、うーん素晴らしいなあ満足満足。

勧善懲悪がどうこうという話もあるけれど、そもそもこういう理不尽スリラーで勧善懲悪とか求めるのはどーなのかと思うし、百歩譲って勧善懲悪が求められたとしても、あのラストってそんな手放しのハッピーエンドとは思えんのだけどなあ。

不満があるとすればやっぱり外に脱出してからの一連の引き戻しシーンで、あれって意外性のある展開としてやりたいのはよくわかるし、車の犬アクションシーンとかもシンプルながらよく撮れていると思うんだけど、やっぱり外部まで老人の手が伸びてくる描写はかなり危ういと感じちゃうんだよなあ。

っていうのも、今回の映画の魅力は「盲目の老人」という弱者が「自分の家」という地の利を活かすことで意外なほどの強さを発揮するという点にあるはずで、だから老人と家は単なる物理的な関係を越えたスピリチュアルなサムシングを持っているように感じさせなきゃならないんじゃないかしら。鍵のかかった地下室に女性を監禁するなんてシチュエーション、完璧に老人の内面の比喩になっちゃってるわけじゃないですか。だから老人が外に出ても強いのは逆接的にその家の神秘性を剥いじゃってる感じがする。

そういう意味でいうと、主人公たちが「老人の身体の一部であるはずの家を逆用して」反撃を行うようなシーンがあったらさらに良かったのかなあとも思う。いつも定位置に置かれていた包丁を逆さまに置くことで老人が刃を掴んでしまう的なね。でもってそれは、地下室に監禁されていた女性がきっかけになったら、さらに効果的になったんじゃないかしら。