ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

本当の戦争の話をしよう

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)

過去と現在、虚々実々を自在に行き来して、戦争という暴力的な装置が普通の人間の物語をいかに解体したか、語られるべき本当の戦争の話とは何か、という人間の物語の機能の根源を探るような話であり、その探求こそが作者の苦悩を間接的に示すという、屈折した、しかし切実な響きのある小説だった。
『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件』 から立て続けに読んだこともあり、PTSDと人間の認知における物語の機能、みたいな視点を強く意識しすぎたかもしれない。いやそれは確かにこの本の主題でありそう読まれるべきものなのだろうけれども、余りにもその点に読みが注力しすぎてちょっと客観的な読み方になってしまったのがもったいない感じもする。もうちょっと突っ込んで没頭した方が良かったのかも。
しかしこの小説を翻訳した5年後に地下鉄サリン事件が起こり、村上春樹は『アンダーグラウンド』 を書くのだな……なるほどなあ……