ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

憲法で読むアメリカ史(全)

 

わははは、めちゃくちゃおもしれー!! コレを読んでから『リンカーン』観たかったよね……

とはいえこれが面白いと思えるのは、今まで映画を観まくって、自分の中でアメリカという国のイメージがおぼろげながらに掴めてきたからよねえ。っていうか、そのイメージの源泉が、バッチリ合衆国憲法に刻印されてるからこそ、こんなにおもしれーって思えるワケで。

とはいえ、映画を観ていると、むしろ公民権運動とその後の女性の権利運動辺りがテーマになりがちだけれども、この本で特に厚く取り上げられているのは、建国から南北戦争の辺りよね。まあだからこそ、黒人奴隷がどのように解放されて、しかしジム・クロウ法で隔離されたのか、みたいな経緯を興味深く学べたってのもあるか……あとネイティブ・アメリカンの扱いとか、州の独立性の問題とか、いやー、やっぱり建国時に制定された憲法って、国の性格を強く方向付けたんだなあ、という感じ。っていうか、ここまで憲法が強く国民性に影響を及ぼすのを目の当たりにすると、日本って憲法がどうでも良さ過ぎね!? とか思ってしまうよなあ。

あと良かったのは、最高裁判所の独立性の問題をちゃんと追えたこと。三権分立も最初から上手く機能したわけじゃない、というのはだいぶ驚きがあった。まあそりゃあ、アメリカっていう国が、民主主義の実験って側面もあるわけだしなあ。努力なくして機能するわけがないよなあ。

「女装と男装」の文化史

 

いやー面白かった。というかこの本のおかげで「さらば、わが愛 / 覇王別姫」を見ることができたので、もうそれだけで万々歳って感じである。

過去の異性装の作品を取り上げながら、ジェンダーの問題を分析している本だけれども、 2009年に書かれたということもあって、今見ると時代がひとまわりしている感じがすごくする。今、異性装をテーマに作品を書いたら、このエンディングにはならないよね、見てる方もものすごく違和感覚えるよね、みたいな展開が大量にあって、この15年でエンターテインメントにおけるジェンダーの描かれ方は大きく変化したんじゃないかなあ。自分レベルの知識と感性しか持っていない人間でも、比較的最近観た「トッツィー」「ミセス・ダウト」には、そこそこの違和感を持っていたわけでね……っていうか、この本における性自認と性的指向の表記が、現在のシス/トランス・ヘテロ/ゲイとちょっとズレていて、読んでて少し混乱するところもあったしなあ……

とはいえ、そういった過去の名作にどういった視点の問題点があるのか、というのを、改めて指差し確認するのはめちゃくちゃ重要で、その指摘はどれもが大変納得感がある。正直自分が読んだり観たりした作品はそこまで多くなかったんだけれども、特に映画はこれから追っかけ観なきゃなあ、という気持ちになりました。

SAND LAND

 

鳥山明が亡くなったので、なにか一冊読んでおこうと思って……映画にもなって評判良かったしね。

鳥山明が書くマッドマックス! という感じなんだけれども、向こうが裏に神話だのフェミニズムだのが敷いてあるのに比べて、こっちは「戦争」が染みついているのがめちゃくちゃ印象深かったなあ。もちろん現実とは距離があって、そのままなんかの暗喩にはならないんだけれども、デフォルメの効いた「戦車」の向こう側に、抑圧された人間とその死があるんだよ、みたいなことがハッキリと描いてあって、あー、これはすごく強い意思を感じるなーと思ったよ。

それにしても、ベルゼブブって一体なんなんだろうな。キャラクターとしてはなるほどちゃんとツボを突いているし、好感がもてるんだけれども、ストーリーの流れの中できちんと役割を果たせているのか、正直よくわからんところがある。最後の怒ったぞ! からの逆転も、まあカタルシスを得る為の展開なのはわかるんだけれども、しかしそれ以上になんかこう意味を求めちゃうところだよねえ。全体的に保安官の人のドラマが強すぎて、もう少し悪魔の王子がわにドラマの軸があっても良かったのかなあ。いやしかし、そういうドラマがないからこそ、成立する話なのかもしれないなあ。

ミスター・ノーボディ

 

セルジオ・レオーネは大好きな監督なんだけど、この映画は抜けていたぜ……

とはいえ、なんか変な映画だよねコレ。セルジオ・レオーネっぽさも所々にあるんだけれども、それだけではちょっと乗り切れないところがある。っていうか、レオーネの映画ってやっぱり顔の汚さがめちゃくちゃ大事なんだなあって思ったよ。顔が汚れてるってことはその分映像に情報量があるってことで、不思議とその顔に見入って、キャラクターに感情移入しちゃうんだよね……あのクッソ長尺の顔のドアップは、その感情移入があってこそのものなんだなあ、なんてことを思いながら見たよ。

全体的に色々どーなの? というところもある映画ではあるけれども、その珍妙な味があればこそ、モリコーネの音楽が光っちゃうのめちゃくちゃ面白い。ワイルド・バンチでワルキューレの騎行が流れる度に、理屈じゃない昂ぶりとどうしようもない失笑が湧き上がっちゃうのは、いやほんと変な感覚だよなー。

あとコレ、「ウエスタン」の後にヘンリー・フォンダを迎えて撮った西部劇なのね。「ウエスタン」もだいぶ歴史の中に取り残されていく男たちの話ではあったけれども、今回は生き延びて船でヨーロッパに向かうのがなかなか面白いところだよなあ。滅びの美学……ではなく、伝説を伝説にして、しかし男は生き続ける、というのは、レオーネの意向がどれだけ入ってるのかなあ、なんてことは考えるよな。

アステロイド・シティ

 

相変わらずけったいな映画を撮るなー。いやまあ表面上だけでも面白いは面白いんだけど、メタ構造とかわざわざテレビを採用したところとかどー考えていいのかわからんといえばわからん。1950年代とか核とか科学への信奉とか、そこら辺のニュアンスは読めば色々読めそうなところではあるよなーと思うが、しかしメソッド演技がどーのこーのみたいな芝居のことをいわれると、うーんやっぱ読み方がわからんなーとは思う。

そういうのをそこまで気にし過ぎずに楽しく見られてしまうのがさらにどーなのかって感じだよな。まあ大きな話としては、死をどうやって受け入れるかって喪の仕事なワケだけれども、それがキッチリとした埋葬ではなくてユルユルと解消されてしまうのがこの監督って感じ。それがメタ構造での芝居へのスタンスに対応してたりするんやろうけど、うーん、まだ整理しきれずに頭の中でゴチャゴチャ考えてみたい感じはする。

それにしても、現実世界に出てきた役者の豪華面子に爆笑した。あの3人に指導されるとかちょっとすごすぎてむしろドン引きでしょ……

金の糸

 

金の糸(字幕版)

金の糸(字幕版)

  • ナナ・ジョルジャゼ
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なんか旧共産圏の国なのはわかるんだが、ジョージアって言われてもいまいちイメージが湧かないんでピンとこなかった。グルジアだとなんとなくソ連って感じはするか。ちゃんと土地のイメージを持っているのは大事だなあと思った。

しかし「金の糸」が金継ぎの話だとは思わなかったなあ。急に日本が出てきてそりゃまあビックリするよ。よく考えたら陶器自体がオリエンタルなものってこと?

あとまあ、なんとなく金の糸で過去と現在を接げないことが、アルツハイマーと関連付けられて語られるのは、ちょっと怖いなあとも思った。いやまあ、主人公も似たような年齢だし現実の認知も危ういところ有り得るのだろうし、だからふたりを隔てるのが人々との繋がり、みたいなストーリーでもあるのかもしれないけれども。

っていうか、えー!? この映画の監督、91でこれを撮ったの? いやー、すごいなあ。となるとかなり自身の経験が反映されているのだろうし、もっと国の歴史について知識があった方が面白く見られるんだろうなあ……

地獄のヒーロー

 

地獄のヒーロー

地獄のヒーロー

  • チャック・ノリス
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「チャック・ノリス vs 共産主義」を見てへーおもしれーとは思ってたんだけど、肝心のチャック・ノリスの映画ってそんなに見てないのよね。スティーブン・セガールとかもほとんど見てないので、一応押さえておかなきゃ、とは思うんだけど……

ほいでこの映画はチャック・ノリスの代名詞なワケね。 キャノン・フィルムズのドキュメンタリーもちょうど見ていたから、あーなるほどこういうノリで作品がつくられていたんだねーと納得。

しかしまあ、映画自体はそんなに特筆すべきところあるか? という感じはするかなあ。アクションもそんなに洗練されているようには思わないし、キャラクター造形も魅力的か? というとよくわからん。まあ時期的に、アメリカはベトナム戦争の傷が癒えていなかっただろうし、そういう中でこういう愛国心に訴える作品がヒットしたというのは、理屈としてはわかるけれども。

まあ、筋書きとしてはそりゃあランボーとか思い出さざるを得ないよね。ロッキーもガンガン愛国心に舵切りするわけで、やっぱり80年代のアメリカの空気ってこういう感じだったんだなーという印象で作品を見終えたのだった。