一部完全に幻想というのが明示されるシーンも合ったけれども、全体を通してだいぶ現実と妄想が交錯している感じで、だからこそこの甘々なストーリー展開が許されるんだろうなあとは思う。いやまあその、現在の映画界でのゲイの取り上げられ方って、この時代の当事者から観れば隔世の感だろうし、であればまあこの感触でストーリーが語られるのも決して悪くはないよね。
しかしまあ、考えてみれば当然という感じのどんでん返しなんだけれども、ミステリの核となった仲違いの原因がエイズ……というのは、衝撃を受けてしまうよなあ。ゲイの世界でエイズというのが大変重要な出来事で、それが世代を隔てているということが、本当にうまく示されているなあと思ったよ。
あと面白かったのは、話のスケール感だよなあ。アメリカの地方のコミュニティが強固なのは知っていたけれども、これだけローカルな感じで歴史が語られる作品は結構新鮮。地元の名士を皆が知っていて、歴史のある場所には住人の共通認識があって……という現実感が、主人公の記憶を巡るフワフワしたストーリーを、うまく現実に繋ぎ止めているよなあ。いや、面白かったです。