プロ棋士にも人気のある升田幸三だけれども本を読んだのは初めて。エッセイとか対談とかが収められていて、将棋の技術的なことは全然触れられていないけれども、休場明けの調整法なんかが描かれていて面白い。60になってタイトルをみたいな話は、否応なしにそれからの大山先生の活躍を連想してしまうよね。羽生善治はさすがにだいぶ成績が落ちているけれど、果たしてそういった境地に辿り着けるのだろうか……
読んでいて一番興味深かったのが、将棋というゲームをどのように捕らえているかで、「動きと働きの違い」というのがとても面白い。動かすことと働かせることは似ているようで全く違って、それができるかどーかというのがにんべんの違いであるというのは、将棋ならずともとても気が利いていて良いですね。あとそれと通じているのだろうけど、将棋は相手の王を殺すのではなく相手が差す手をなくするゲーム、というのもめちゃくちゃ納得感がある。そうかーだから投了の時は「ありません」なんだなあ。なんか将棋というゲームがちょっと違って見えそうである。
しかし文章を読んだだけでこれだけ「話が好きなんだなーこのおじさん」と納得できる本も少ないんじゃなかろうか。人間性がじゅわじゅわにじみ出してくる感じがすごい。