ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

アイドル稼業、はじめました!

 

アイドル稼業、はじめました! (電撃文庫)

アイドル稼業、はじめました! (電撃文庫)

 

全員無能。唯一例外がいるとすれば半グレの悪者で、切羽詰まった状況でウルトラCを出して不可能を可能にしているのでまあキャラが立つ。でもそれ以外の人間が、もう、全員、クソみたいに頭が悪くて薄っぺらで、読みながら「ハァ!?」「ハァ!?」「ハァ!?」と悲鳴連発。イライラして20回は途中で読むの止めた。Amazonの平均見て買ったんだけど、いやー自分の感覚とは乖離しすぎていて全くアテにならないなあと思いました。

まーTSなんて定型ジャンルだからお約束で済ませるべきところは済ませて全然良いんだろうけどさー、「女の子になっちゃいました!」から「アイドルやってまーす」までの超おいしいはずの展開を何事もなかったかのようにカッ飛ばして既にキャッキャウフフの寮生活とかしてるの意味がわからない。なぜそこを書かないのか。顔を振ると男に戻れるとか思いつきレベルのクッソイージーなTS往復ギミックは、その発見の瞬間を描かないことを含めて全く理解不可能。それでもまあ一応二面性を持つことで秘密をテコにストーリーが進むのかなーと思ったら、単なる便利な変身機能で「は?」となる。ふつーもっと憧れの人とのあれやこれやを面白く描こうと努力するでしょこの建て付けだったら。

そもそも「アイドル稼業」とか言ってアイドルに対する憧れが全く無いのは本当にクソで、いやまあ別に主人公に憧れがなくても良いんだけど周囲の人間にアイドルへのリスペクトが全く感じられないのよね。いやまあアイドルだけじゃねーや。事務所の人間にも事務所の人間として振る舞いというものが全くないし、マスコミの人間にもマスコミに身を埋めているからこそできる説得力のある振る舞いというものが全く感じられない。この本って、自分と全く別の立場の人間と交差するときに、全く別の価値観の正しさとの衝突があって、そのコンフリクトが面白味を持つ構造じゃないですか。なのに異なる価値観の正統性を描写することを最初から拒否して、コッチ側の一方的な理屈と薄っぺらな「公正さ」で、敵の価値観を不当に矮小化している感じ。それがいちキャラクターとしての行動原理ならまだしも、この世界の登場人物全てがそういった価値観の下に行動していて全く問題視されていないという……基本的に作品の評価で作者がどーのこーのは言いたくないけど、さすがにコレはちょっと創り手側の世の中の捉え方が浅すぎません?

「汚いことはだめ!」「公正に振る舞うことが正義!」という価値観をゴリ押しした結果仲間を窮地に陥らせておいて、そこで自分の行動原理に疑問を抱かないのは心底共感不能。学級会かよ。もしも稼業なんて呼び方をせずに、本当のアイドルへの憧れを描けていたならば、そこにもう少し葛藤が生じたかもしれないし、そういう意味では「自分の夢を叶えること」への希求が全体的に軽んじられすぎてるのかなあ。