おーこれは「かわいい」って感じがすごくする。志村貴子漫画のヒロインにはいつもこう自分の感覚からは離れたところで鉤括弧付きの「かわいい」を感じることが多いんだけど、その純度をメチャクチャ高めた感じだ。表題作のお姉さんはたいへん圧倒的な「かわいい」感覚を持っていて、いやこの短編で断片的で具体的なエピソードで「うへー『かわいい』なあ」なんて実感するわけではないんだけど、でもコマとコマの隙間から「あ、これって『かわいい』ヒロインとして描かれてるわ」ってのはすげーわかって、うーんなんなんだこの感覚。ふしぎ。
あと志村貴子って演劇を中心に作中作は多用するのだけれども、結構ストレートに創作の苦しみやらが描かれていてちょっとビックリする。っていうか本人っぽいひといるよね? そのテクニック観ててもメタい表現って嫌いじゃないんだろうけど、作品中では極力品良くその側面を隠しているようにも思えたので、意外。
しかしなあ短編も悪くないのだけれども、もっとキャラクターについて不覚掘り下げていって愛着持つ、長編の方が好きなのかもしれないなあ、と読みながら思う。どーしょーもない人間がウダウダ言いながらしかしどーしょーもなく生きていくのに漫画読みながら付き合わされるのが好きすぎるんだろうなあきっと。