『完全なるチェス』を読んでアウトラインは知っていたので、内容と言うよりはむしろ映像としてのボビー・フィッシャーを堪能した感じである。アイスランドでの下りのジリジリ感とかは、文字面で読んだときとは全然印象が違って感じられた。まあ全体的に、幼少期のアレやコレやに触れる余裕がないから、ボビー・フィッシャーへの共感が低くて、客観的に「チェスにのめり込む中で精神のバランスを崩した面倒な人」って理解に近づいちゃうよなあ。
それにしても視点が冷たいなあと感じるところはあって、カスパロフの無残な切り捨てとか勘弁してあげてよー、晩年の知り合いの冷たい別れとかもういいじゃんかよー、と観ていて大変辛くなる。関係者にインタビュー撮ってたらそれもしょうがなかったのかなあ。実際それが事実なんだろうしなあ。でも普通は人間的な側面とか一部には残して、共感できる余地を残しておくものじゃないかなあとは思うんだけど。うーん、うーん。
世界チャンピオンになることと比較できるものなんて彼の人生にはなかったのだ、というような解釈をすれば、まあそうなのかもしれないけどさ。そういう意味では「世界と闘った男」「AGAINST THE WORLD」ってのはすごいタイトルだなーと思う。