ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

アステロイド・シティ

 

相変わらずけったいな映画を撮るなー。いやまあ表面上だけでも面白いは面白いんだけど、メタ構造とかわざわざテレビを採用したところとかどー考えていいのかわからんといえばわからん。1950年代とか核とか科学への信奉とか、そこら辺のニュアンスは読めば色々読めそうなところではあるよなーと思うが、しかしメソッド演技がどーのこーのみたいな芝居のことをいわれると、うーんやっぱ読み方がわからんなーとは思う。

そういうのをそこまで気にし過ぎずに楽しく見られてしまうのがさらにどーなのかって感じだよな。まあ大きな話としては、死をどうやって受け入れるかって喪の仕事なワケだけれども、それがキッチリとした埋葬ではなくてユルユルと解消されてしまうのがこの監督って感じ。それがメタ構造での芝居へのスタンスに対応してたりするんやろうけど、うーん、まだ整理しきれずに頭の中でゴチャゴチャ考えてみたい感じはする。

それにしても、現実世界に出てきた役者の豪華面子に爆笑した。あの3人に指導されるとかちょっとすごすぎてむしろドン引きでしょ……

金の糸

 

金の糸(字幕版)

金の糸(字幕版)

  • ナナ・ジョルジャゼ
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なんか旧共産圏の国なのはわかるんだが、ジョージアって言われてもいまいちイメージが湧かないんでピンとこなかった。グルジアだとなんとなくソ連って感じはするか。ちゃんと土地のイメージを持っているのは大事だなあと思った。

しかし「金の糸」が金継ぎの話だとは思わなかったなあ。急に日本が出てきてそりゃまあビックリするよ。よく考えたら陶器自体がオリエンタルなものってこと?

あとまあ、なんとなく金の糸で過去と現在を接げないことが、アルツハイマーと関連付けられて語られるのは、ちょっと怖いなあとも思った。いやまあ、主人公も似たような年齢だし現実の認知も危ういところ有り得るのだろうし、だからふたりを隔てるのが人々との繋がり、みたいなストーリーでもあるのかもしれないけれども。

っていうか、えー!? この映画の監督、91でこれを撮ったの? いやー、すごいなあ。となるとかなり自身の経験が反映されているのだろうし、もっと国の歴史について知識があった方が面白く見られるんだろうなあ……

地獄のヒーロー

 

地獄のヒーロー

地獄のヒーロー

  • チャック・ノリス
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「チャック・ノリス vs 共産主義」を見てへーおもしれーとは思ってたんだけど、肝心のチャック・ノリスの映画ってそんなに見てないのよね。スティーブン・セガールとかもほとんど見てないので、一応押さえておかなきゃ、とは思うんだけど……

ほいでこの映画はチャック・ノリスの代名詞なワケね。 キャノン・フィルムズのドキュメンタリーもちょうど見ていたから、あーなるほどこういうノリで作品がつくられていたんだねーと納得。

しかしまあ、映画自体はそんなに特筆すべきところあるか? という感じはするかなあ。アクションもそんなに洗練されているようには思わないし、キャラクター造形も魅力的か? というとよくわからん。まあ時期的に、アメリカはベトナム戦争の傷が癒えていなかっただろうし、そういう中でこういう愛国心に訴える作品がヒットしたというのは、理屈としてはわかるけれども。

まあ、筋書きとしてはそりゃあランボーとか思い出さざるを得ないよね。ロッキーもガンガン愛国心に舵切りするわけで、やっぱり80年代のアメリカの空気ってこういう感じだったんだなーという印象で作品を見終えたのだった。

さらば、わが愛/覇王別姫

 

なんだこれ。傑作すぎるだろ。

まず同性愛を描いた作品として演出がキレキレなのがあって、随所に男根のメタファがズガンと描かれてて参っちゃうよね。煙管を口に突っ込まれるところで血が出たり、スッポンの首を斬って微笑んだりと、いやこれさすがにやり過ぎだろ!? と思っちゃいそうなシーンも、その直球の演出にただただ打ちのめされるしかない感じ。

ただすごいのは同性愛だけじゃなくて、ふたりとその周囲を巡る人間関係のドラマになっているとこだよなあ。師匠の呼び出しのやり取りはもう面白すぎて仰け反った。菊仙と蝶衣の関係の変化だけでも、ラストの破局含めて、ほんと最高に良くできてるよなあ。

またその人間関係が、中国の激動の歴史と大きく相互に関連して動いているのがめちゃくちゃ良くできている。こういうのはちゃんと歴史が頭に入っていてよかったなーって感じ。日本軍に占領された時、敵の大将を「芸術を理解する者」として描いていたところも印象深いよなあ。それと対比して文革の体制が芸術を弾圧する側になっていたのは、当事者の強い意思を感じさせられる。

で、それがさらに京劇をテーマとしたメタ構造に収まってるわけでしょ? あのラストなワケでしょ? いやー、なんだよこの神がかった脚本は……今まで見ていなかったことを激しく後悔しましたよ。すごい。

葬送のフリーレン

 

なんかネットで「オタクの理想の老後」みたいな話があって気になってたんだけど、いやーこれが老後はマズいでしょ。っていうかそもそも主人公がエルフで老いと全く関係ないじゃん!! ここで書かれている「老後」って一体何を指してるのよ? どういう見立てなんか全くわからん! 勇者たちパーティーの老いも、一応描かれてはいるけれども、みんな善人だし実際の老いていく喪失感みたいなのは全然足りなくて、キラキラでカギカッコつきの「老後」で、真面目にそこに老いを見ちゃマズい題材でしょコレは。

フリーレンの人間との向き合い方については色々疑問があるというか、そこまでの人生における彼女の人間との関わりが想像できないなあと思うし、勇者とのふれあいの中で人間の見方が変わったというのは、もう少し大きな出来事でなければ不自然じゃ無いかなあ……という引っかかりはちょっとだけある。あるんだが、まあそれはこの構造でストーリーを語るために仕方ないところではあるよなー。

面白いのは、冒険を続ければ続けるほど、最初テキトーなキャラにしか思えなかった勇者の強さが立っていくこと。現在時間で強い敵が出れば出るほど、勇者が化け物だったということがわかる構造で、うーんあいつらマジで本当に魔王を倒せるほど強かったの!? となる。まあ、そういうところの理由付けはかなりしっかりしていて感心させられるから、きっと何かちゃんとあるのだろうけれども……

アクションもイイし、ストーリーもこの構成が生きているしで、とても良い作品でしたよ。

古代メソポタミア全史 シュメル、バビロニアからサーサーン朝ペルシアまで

 

あいかわらずあとがきがアツいな。小林登志子の本、あとがき読みたさに買ってしまいたくなるよ。

神話とかがとっかかりになってはいるけれども、さすがに全般的に馴染みがなさ過ぎて、ちょろちょろ流し読みになってしまう。地理感もないので、具体的なビジュアルとかがないところは、ちょっと厳しい感じもあるよねー。とはいえ、世界史で出てきた名前があるとテンションが上がるのは事実。安息国とか聞いたのもうめちゃくちゃ久しぶりすぎて笑っちゃったよ。

まあしかし、特にバビロンって歴史も長いし興亡も激しいしで、全体の流れが全然掴めなかったのが、ようやくなんとなく見取り図が取れた感じで良い。バビロン捕囚って単語はおぼえてたけど、なるほどあんなに後の時代の話だったか。エジプトとかとの関係が入ってくると、途端に東西の時代が連結される感じでいいよなあ。

あとまあ、イランというかペルシアというか、そこら辺の文化的差異をきちんと押さえておかなきゃならんのだよなーとも思った。っていうか、イスラム教が広まる以前の中東地域って、やっぱりちょっとイメージが湧きづらいよなあ。馬が途中から、というのはともかくラクダが使われるのが結構後なのもビックリするもんなあ。

実録ブルース・リー/ドラゴンと呼ばれた男

 

これは映画なのか? テレビっぽいつくりではある。

なんか最近、世界サブカルチャー史で「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」がわりと批判的な視点で語られていたのもあって、ブルース・リーのドキュメンタリーを見ると、タランティーノの演出がますます「うーん」って感じに思えてしまうな。世界サブカルチャー史では、ヒッピーが悪として描かれていたことに対する批判だったけど、ブルース・リーのこういう背景を見ると、やっぱりもうちょっと描き方はあったんじゃねーのかなあ、って感じはするよなあ。まあそもそも、ガンガン路上で道場破り仕掛けられる状況だった、というのがちょっと想像の斜め上過ぎるわけではあるけれども。

しかしまあ、迫害されていたマイノリティが夢を掴むが、その反動で精神に負担がかかり薬物で命を落とす……というストーリーにどうしてもなってしまうよなあこれは。武術を嗜んで精神修養しても、そうなってしまうんだなあ。幼い頃からショウビズの世界にいたっていう状況も、うーんいかにもスターって感じ。息子が不慮の事故で命を失ってしまうところも含めて、なんかちょっとできすぎていて怖いよねえ。