ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

チャンピオン

 

チャンピオン [DVD]

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いやー、カーク・ダグラス! って感じ。

面白い映画だよなー。っていうかキャラ造型がめっちゃ変。冒頭でいかにも持ち上げるリング入場シーンから始まったのが、後半で再解釈されて再演……ってつくりからしてまあ皮肉な語り口なのはわかるんだけど、それを大スターのカーク・ダグラスが意気揚々とやってんのめっちゃおもしろー。

いやまあつくりとしてはボクシング界のブラックな側面に押し潰された被害者って側面もデカいんだけど、だったらもうちょっと被害者っぽく描いてもいいやつじゃん? なのに身内にもクソオブクソな仕打ちをしまくって因果応報としか思えない作りになってておもしろー。クライマックスの火事場のくそ力も、トレーニングとか全然関係なくて、女の顔を見て奮起一発! いやー、すげー……こんなつくりでいいんだ……

いやまあむしろこっちの方がリアリティあるのかもしれませんけど我々『ロッキー』とかに毒されすぎてるのかしら。でもボクシングシーンはもう少しどうにかならなかったのかなーとは思う。映像自体はフィルム・ノワールの影響バッチリな感じであーボクシングには合ってるんだけど。

テイク・シェルター

 

テイク・シェルター(Blu-ray)

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見た目からしてなんかB級ホラーかなーと思って見始めたら、いやーこれなんかすごい映画になっていってビックリした。

精神異常者の視点を描いた作品って何でもアリになっちゃうし取り扱いが難しいなあといつも思うのだけれども、この映画は「守るべき家族」を織り込むことで共感の線をちゃんと繋いでいるのがめちゃくちゃ巧み。素晴らしい。特に娘を軟調にさせちゃってるのが大変よろしくて、娘を守らなければならない父親が、自分の母が精神疾患にかかった恐怖を抱えつつ、ストレスフルな生活を行っている描写がとてもリアル。そんな毎日のストレスが集団の視線の中で爆発してしまうシーンは、いやあ本当にすごいものを見たなーという感じ。

でもこの映画は狂っていく人間よりもむしろそれを取り巻く家族との関係が主題になっていて、疑いつつ苦しみつつも彼と共にいることを願う妻の強さが本当にすごいよなあ。地下シェルターへと避難したところでの鍵を巡るやり取りなんて、ちょっとすごすぎて画面に釘付けになっちゃったよ。あそこのシーンでもう大満足だし、だから映画としてきちんとオチをつけるラストは、まあ確かに必要なんだろうけど、わりとどうでもよいという気持ちもある。

いやー、面白い映画であった。この監督は他の作品も見よう。

ロスト・イン・スペース

 

ロスト・イン・スペース [Blu-ray]

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ってかこのジャケット何? なんでこんなに人が重なってるの? 左右の広大なスペースがロストしてしまったってこと? 何?

まあその、どーしょーもない映画だなーって感じでありまして、寝起きで見始めたはずなのに眠くなって二度寝してしまったのだった。そんなこと普通ある? とにかくたるい。まあのっけから全く緊張感のない戦闘シーンで笑っちゃうんだけど、「情報操作をして地球の平穏を守ろうとしている」支配者階級はまあフツーにヤベー奴らだし、いきなり「デストロイ、デストロイ」っていちいち口にしながら襲ってくるロボットには爆笑。まー意図的に考証とかを無視している感じもあるし、そういうリアリティだからいいっちゃいいのかもしれないけど、でもこの時代にこのビジュアルでそれはしんどいなーと思う。

あと映画はやっぱり大きなストーリーの筋は必要だよなあ。それぞれのキャラクターのドラマの彫り込みも浅いし、一本を貫く起承転結みたいなのもない。いかにもとりあえずアクシデントを起こすテレビドラマって感じの作りでゲンナリ。

唯一良いところがあるとすればテーマソングだよなー。ってかあの曲、このシリーズのテーマだったのか。アレを生み出しただけで、この作品の価値があるくらいだと思います。

TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ

 

TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ

TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ

 

うーんこれはいかにもクドカン監督作品って感じ。やっぱり映画の監督ってかんじじゃないよなーと思うがしかし、じゃあこの脚本を別の映画監督がとれるかというとやっぱ難しいだろーなーとも思うし、あとなんだかんだ映画として落とすべきところに落ちてる感じもするので、うーんまあこういう映画も良いのかなー。

しかし自分がクドカン脚本に求めてしまうのは軽妙なテンポと台詞の応酬だったりするので、そこらへんもっとくれ! と思ってしまう。何よりも長瀬力が足りない。鬼のメイクもまあわかる、わかるんだけどもったいない。見た目の作ったキャラに引っ張られて、この役者のナチュラル? な芝居の面白さみたいなのがちょっと薄い。ヒジョーに辛い。

他のキャストも色物揃いでさすがクドカン力だなーと思わされるものの、どーせ素で面白い人ばっかりなんだから、メイクとか控えめで見せてもらってもいーじゃんかーと思ったりもする。というか一番良かったのはダントツで死神だよなー。あんなのと爛れた生活送るのマジで最高だよなー。せっかくなんだしもうちょっとアパートの生活感はどうにかして欲しかったなー。なんなのあの雑に作った生活感。そうじゃないでしょあそこは……あと運命の女性に宮沢りえを持ってくるのはマジでズルいと思います。

まーその、なんだかんだ「ロックが好きなんだなあ」「楽しそうにやってるなあ」というのが伝わってくるので、それだけで全然良いと思いいました。

ロバート・ライシュ: 資本主義の救済

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ロビー活動が無制限になって資本家が政治家と結びついてアメリカの格差が広がり資本主義が破綻しかけているよ、という話なんだけれども、中心に据えられているのがロバート・ライシュというクリントンの元で労働長官として働いた人物であるのがいやはいやはや……リーマン・ショックやら刑務所やらの映画をいくつかみたけれども、やっぱりビル・クリントンの経済政策は大きな影響を与えたんだなーというのがわかりますね。

あとはラストベルトみたいな話? 実際の選挙戦でトランプがどのように捉えられていたかが生っぽく捉えられていて大変良かった。ああいうアングルで選挙戦が戦われていたのかーって感じ。あとバーニー・サンダースはやっぱおもしれーなー。隣にヒラリーがあの表情でいられると、そりゃまあだいぶネガティブに見えちゃいますよねー。

しかしまあやっぱり全体を通して民主主義への信頼みたいなのがすげーあって、うーんすごいなあアメリカと思わざるを得ない。対話によって物事を解決できると信じるその強さよ……そしてこんなにも力強くデモを肯定するんだなーと感心してしまう。日本でデモをこういう風に捉える作品ってなかなかないよねえ……しかしまあ、日本の格差ももうシャレになってない段階に来てる感じはするんだけどなあ。

なんて素敵にジャパネスク

 

なんて素敵にジャパネスク (集英社コバルト文庫)

なんて素敵にジャパネスク (集英社コバルト文庫)

 

きょ……教養……ティーン向けの小説にこんなに教養があったのか……いやあ、すごい……

オレがこういう時代の教養なさ過ぎというのもあるけれども、当時の歴史風俗を下敷きにして、短歌なんかの解釈を丁寧にしつつ、少女の内面描写でグイグイ読ませる。ベタベタな恋愛のアレやコレやではあるけれども、まあやっぱりベタベタなものは面白いので大正義。なんだかんだこういう恋愛ものは読むと「ええのう……」と思ってしまう。

あとそこにちゃんと気の利いた読み物としての捻りもあって良い。一人称視点であることを生かしたサスペンスと謎解きがちゃーんと機能している。手紙を届けるあたりの主人公の推理&手に汗握る展開なんかは、いやーふつーにエンタメとして面白いですよね。というか主人公が利発なこであるのはやはり良い。とても良い。主人公可愛い。

ラノベの成立のあたりは少女小説とあんまり別れてなくて、『スレイヤーズ!』なんかの文体もなんで女性の一人称なのか謎だったりするのだけれども、まあこういう小説の影響は当然あったんだろうなーと思うよねえ。

ミッドナイト・イン・パリ

 

もうこの「ロートレックキター!!」のテンションの上がり方! こういうエンタメの中で自分が手に入れた知識がちゃんと機能している感じってたまらんものがありますよね……

ってことでウディ・アレンの素敵な作品なんですけど、まー相変わらず素敵でございますね。でもなんかウディ・アレンって見ると「おもしれー」ってなるくせに見る気が不思議と起こらなくて億劫で、だから「絵画作品見るぞー」と思ってマイリストに真っ先に入ったのに伸ばし伸ばしになってたんですよ。そしたらもう、これを結果オーライと言わずしてなんと言いましょうか……

アメリカ文学は正直全然馴染みがないので序盤こそちょっと厳しく、「あーうん名前は知ってる」レベルの感じではあるのですが、あーはいはいピカソの女癖のヤツねとかはいこの杖の導入はもうダリでしょー! とかだんだんテンション上がってくるあたりでやってくるロダン! まあモネのお屋敷も出てきたからそりゃあ出るよねーとか思ってたら! ムーランルージュがドーン! ワーオ。アール・デコの装いがあの年代で奇異に見られてるシーンだけでもう大爆笑でございます。しかしなんでこのジャケでゴッホが出てこないかだけは謎。なんでや。

まーなんつーかザ・インテリなウディ・アレン炸裂って感じで、まあこういうの楽しんでるのはいけ好かないヤツっておもわれんだろーなーと思いながらもまあ楽しいからしょーがないよね。最終的には「ノートルダムの飛び梁きたー!! ゴシック建築だあああああ!!!!」とかなっちゃったもん。

あー、なんか正直だいぶパリに行きたい気分になってきたな……