ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

コーチ・カーター

 

コーチ・カーター (字幕版)

コーチ・カーター (字幕版)

  • チャニング・テイタム
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サミュエル・L・ジャクソンがサミュエル・L・ジャクソンっぽいなーって感じ。そうだよなー普通に考えるとこういう役柄がハマりそうな役者だよなー。なんであんな色モノ枠に収まっちゃってんだろ。謎。

映画としてはだいぶそつない感じというか、バスケを通じて人間の成長を描くってのは、ベタもベタなんだけれども、このタイミングでちゃんと「バスケの後の人生の方が大事」って言い切る映画が出ているのはさすがだよなーと思わされました。まあ、格差社会とアメリカンドリームが身近にあるからこそ、わりと自然に出てくる考え方なのかなあ。日本では、甲子園に行ったところで、それが大学の学業と結びついてその後の人生に大きな影響を与える……とはならんからなあ。もちろんプロになれれば別だけど、別に甲子園優勝したらプロ入りが約束されるわけでもなし。エンディングで語られる選手たちの将来も、プロ選手とかではなくて、学位とかそういうのだったのが大変納得感ありますね。

それにしてもまあ基礎体力作りが大事という映画であった。ダッシュはともかく腕立て伏せってそんなにたくさんできるもんなんか? っていうかバスケに必要な筋力なんか?

野のユリ

 

野のユリ

野のユリ

  • シドニー・ポワチエ
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シドニー・ポワチエが黒人で初めてアカデミー賞を取った作品らしい。なるほどこりゃあシドニー・ポワチエの独壇場って感じだなぁ。

しかしまあ、ちょっと背景がよくわからなくもある。そもそもドイツ人の修道女がアメリカで共同生活を行っている状況がなんなのかわからん! 途中でヒットラー引っ張ってきてたりもしたけれども、そりゃまあそこら辺のいざこざでアメリカにやってきたとして、でもカトリックっぽかったよね? ドイツなのにプロテスタントじゃないのもヨーわからんし、うーん、どんな背景になっているのだ? そもそも黒人側の宗派もあんまりよくわからんしな……そこら辺、ちゃんと知識があるとまた面白いのだろーか。

あとまあ、そもそもシドニー・ポワチエが何者なのかがマジでよくわからん。この時代だとまだ公民権運動とかの影響が映画にガンガン影響与えてきてはない、というのはなんとなく想像できるけれども、しかしこういう映画の立ち位置で描写されることに、どれだけリアリティがあったのだろうか。っていうかホント何者なんだ、この主人公は。

牧歌的な話であるのはわかるんだけれども、うーむー、この題材はここまで牧歌的で本当に良いのだろうか、というような疑問はどうしても抱いてしまうなあ。

 

コール・ジェーン ―女性たちの秘密の電話―


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『ジェーンズ 中絶の権利』がめちゃくちゃ面白くて、コレを題材にして映画を撮ったら面白いんじゃ? って過去記事にも書いたんだけど、本当に映画になるとは思わなかったぜ!

とはいえ、ドキュメンタリーの内容はそれだけで結構サスペンスな部分があったんだけれど、この作品はちょっと切り口が工夫してあって面白い。ジェーンズがどうやって成立したかではなくて、主人公が途中からジェーンズに参加して、自ら堕胎手術を行うようになるまでの自立の物語にしてあるのが、なるほど納得の構成という感じ。

いやまーしかし、題材的に当然なのかもしれないけれども、かなり意図的に政治的なつくりにしてあるよなーコレ。大麻とか共和党とへの意思表示が明瞭だなあ、と思ってはいたけれども、ラストであそこまであからさまにヒッピーを持ち上げるとは思わなかったよ。いっそせいせいしちゃいますわ。

それにしても、シガニー・ウィーバーがあのポジションの役柄をやるのはめちゃくちゃ説得力あるよなー。フェミニズムのある種の文化的なアイコンになってるよなー。ま、ストリップをノリノリでやり出したときはもうどういう感情で観れば良いのかわかんなくなっちゃったけどね!

しかしまあ、さすがにこれだけ文化的背景がわかるようになると、それだけで楽しく観られちゃうよなー。堕胎の話で「ノーチョイス」とか言われるともうその言葉の選び方だけで「プロチョイスの話だもんね」とか納得してしまうし……ロー対ウェイドの判決に、わざわざ男性のみの最高裁を当てこすったりねえ。

あとは音楽かな……題材の性質上、引用される音楽の内容とかバックグラウンドを知ってたら、もっと面白く読めるはずだよなぁ。

オッペンハイマー

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ノーランってもっとガジェットに凝って、目先の面白さを追い求める監督という感じがしていたので、この作品は結構新鮮だよねえ。ふつーに文芸って感じ。TENETも見た目は色々オモシロかったじゃない? そういうオモシロ成分を抜いて、ストイックに描いてるよなあ。時間軸が弄ってあって、序盤のワンシーンが実はオッペンハイマーの内面を一番わかりやすく示していた、みたいな構成はあるけれども、しかしアインシュタインとの関係含めて、結構前提知識が必要って感じだもんなあ。普通、アインシュタインが平和活動を行ったこととか、もう少しわかりやすく示すはずだよなあ。

そういう意味で、オッペンハイマーって人物が、アメリカの歴史の中でどういう位置に立っているのか、もうちょい前提として理解してた方が良かったのかなあ。もちろん映画では彼中心にたっぷり描かれているけれども、原子力政策でどのような振る舞いをしたかがわかんないから、現在軸の出来事が結構混乱した。ロスアラモスの辺りは個人的に興味もあって本を読んだから、あーそういえばそんな話だったか、と思い出しながら観られたけどね。

しかしまあ、よく考えたら3時間くらいあるこの映画を、なんでこんなに集中して見られるんだろうなあ、って感じはする。普通この脚本だったら眠くなりそうなもんだけれどもな。ノーランってなんなんだろうな。不思議。

ミスター・ノーボディ

 

セルジオ・レオーネは大好きな監督なんだけど、この映画は抜けていたぜ……

とはいえ、なんか変な映画だよねコレ。セルジオ・レオーネっぽさも所々にあるんだけれども、それだけではちょっと乗り切れないところがある。っていうか、レオーネの映画ってやっぱり顔の汚さがめちゃくちゃ大事なんだなあって思ったよ。顔が汚れてるってことはその分映像に情報量があるってことで、不思議とその顔に見入って、キャラクターに感情移入しちゃうんだよね……あのクッソ長尺の顔のドアップは、その感情移入があってこそのものなんだなあ、なんてことを思いながら見たよ。

全体的に色々どーなの? というところもある映画ではあるけれども、その珍妙な味があればこそ、モリコーネの音楽が光っちゃうのめちゃくちゃ面白い。ワイルド・バンチでワルキューレの騎行が流れる度に、理屈じゃない昂ぶりとどうしようもない失笑が湧き上がっちゃうのは、いやほんと変な感覚だよなー。

あとコレ、「ウエスタン」の後にヘンリー・フォンダを迎えて撮った西部劇なのね。「ウエスタン」もだいぶ歴史の中に取り残されていく男たちの話ではあったけれども、今回は生き延びて船でヨーロッパに向かうのがなかなか面白いところだよなあ。滅びの美学……ではなく、伝説を伝説にして、しかし男は生き続ける、というのは、レオーネの意向がどれだけ入ってるのかなあ、なんてことは考えるよな。

アステロイド・シティ

 

相変わらずけったいな映画を撮るなー。いやまあ表面上だけでも面白いは面白いんだけど、メタ構造とかわざわざテレビを採用したところとかどー考えていいのかわからんといえばわからん。1950年代とか核とか科学への信奉とか、そこら辺のニュアンスは読めば色々読めそうなところではあるよなーと思うが、しかしメソッド演技がどーのこーのみたいな芝居のことをいわれると、うーんやっぱ読み方がわからんなーとは思う。

そういうのをそこまで気にし過ぎずに楽しく見られてしまうのがさらにどーなのかって感じだよな。まあ大きな話としては、死をどうやって受け入れるかって喪の仕事なワケだけれども、それがキッチリとした埋葬ではなくてユルユルと解消されてしまうのがこの監督って感じ。それがメタ構造での芝居へのスタンスに対応してたりするんやろうけど、うーん、まだ整理しきれずに頭の中でゴチャゴチャ考えてみたい感じはする。

それにしても、現実世界に出てきた役者の豪華面子に爆笑した。あの3人に指導されるとかちょっとすごすぎてむしろドン引きでしょ……

金の糸

 

金の糸(字幕版)

金の糸(字幕版)

  • ナナ・ジョルジャゼ
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なんか旧共産圏の国なのはわかるんだが、ジョージアって言われてもいまいちイメージが湧かないんでピンとこなかった。グルジアだとなんとなくソ連って感じはするか。ちゃんと土地のイメージを持っているのは大事だなあと思った。

しかし「金の糸」が金継ぎの話だとは思わなかったなあ。急に日本が出てきてそりゃまあビックリするよ。よく考えたら陶器自体がオリエンタルなものってこと?

あとまあ、なんとなく金の糸で過去と現在を接げないことが、アルツハイマーと関連付けられて語られるのは、ちょっと怖いなあとも思った。いやまあ、主人公も似たような年齢だし現実の認知も危ういところ有り得るのだろうし、だからふたりを隔てるのが人々との繋がり、みたいなストーリーでもあるのかもしれないけれども。

っていうか、えー!? この映画の監督、91でこれを撮ったの? いやー、すごいなあ。となるとかなり自身の経験が反映されているのだろうし、もっと国の歴史について知識があった方が面白く見られるんだろうなあ……