ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ゴーイング・クリア サイエントロジー・アンド・ザ・プリゾン・オブ・ビリーフ

 

やばい。やばい。やばすぎるぞサイエントロジー

いやあのコレ実際どのくらい事実なんですかね? もしコレがホントに事実だったら、今トム・クルーズがああいう位置にいる意味がオレにはサッパリわかんない。これが公表されてなおハリウッドの表看板としてやっていけんのってなんなの? 途中に『アイズ・ワイド・シャット』なんかも挟まって、映画にいったいどんな影響があったのかすげー興味津々であります。ってか、『コングレス未来学会議』ってサイエントロジーのバックグラウンドわかってたほうが全然面白かったのかもなー。

『穴』ってのが最後の方に出てきて、まあそれが白眉というか、いかにもカルトの洗脳って手法を使っていて大変興味深い。監禁されて責め苦を受けているのに外部に出たら「暴行は受けていない」って宣誓して再び穴に戻りたがる、辺りの意味不明さ。カーストを成立させるとか、弱い者により弱い者を殴らせるとか、そこら辺は北九州の監禁事件の本にもあったけど、共通項だし教本があるんだろうなあ。

途中で弱みを握ってトラボルタに脅迫、みたいな展開があるけれども、ああいうのってむしろ普通の犯罪者の発想で、いやまあそれはそれでヤバ過ぎね? というのはあるんだけど、単純な機械の単純なシステムで精神の奧に入っていくあたりの手続きがやっぱり強いんだろうなあ。

長い映画だけど映像の質も高く、大変面白かった。

ベルリン・コーリング

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役者がすごいなあ。ジャンキーの変化をこんなにも説得力を持って演じた役者ってなかなか見ない感じがします。いや、演出も寄与してるのかもしれないけれども、強い薬で療養中の主役の穏やかな瞳、見てるこっちまで悟りを開いちゃいそうだもん。

どうしようもない主人公が音楽と周囲の人間の理解で立ち直っていく、というストーリーはベタだけれども感動的。だからこそちょっと都合が良すぎるかなーという感じもしないでもないけど、身近にドラッグの文化があったらまあこのくらいやらないと逆にダメなのかもしれないなあ。

あとは全編に流れる音楽が大変大変よろしくて、いやコレ普通にサントラ欲しいです買います、という感じ。こういうジャンルの音楽を聴きたいんだけど、あんまりぴったりした検索ワードがわかんないのよね。

明けない闇の果て

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ISの本読む前にちゃんと観とくべきだったなーコレ。

こういう動画って、インターネットで観ようと思えばいくらでも観られるけれど、当然テレビで放送するには限界があるわけで、すると特に日本なんかでその生々しさを感じることって難易度が上がるよなあ。もちろん日本でも誘拐事件はあってその時に「あ、コッチ側までやってきた」という感じはあったけど、でもこの映画で取り上げられている事象とは鮮明さが違うよなあ。普通にそこら辺で生活していた若者が兵隊として自爆テロが横行する現場に突っ込まれちゃうわけだからなあ。いやー、カルチャーショック。

ドキュメンタリーとしては縦糸の構築に失敗している感じもしていて、カメラマンの真理をなぞったりすることがずいぶん困難な気がする。でもそこら辺の語りづらさとか混乱が、まだ物語として言語化することを拒んでいる現実の生々しさの反映でもある気がするんだよなあ。クライマックスの死体をああやって写されること、それに対してカメラマンが自分の行いを責めることが、全体の中で今更何の意味を持つんだろう? とか思うと、いやそんな安易な意味づけはむしろ拒んだ方がこの世界じゃあ誠実な態度かもしれないなあ、と思ってしまうような……

沈黙‐サイレンス‐

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スコセッシって好きな監督のひとりだけど、「饒舌な監督」って印象が今も拭えないのね。まあ『シャッターアイランド』の時は「あ、なんかずいぶん今までと印象が違うな」って思ったんだけど、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』はまああんな感じだったので油断していた。でもさー、「沈黙」でまさかここまで変えてくるとは思わなかったよ。いやー、すごい。剛速球を全力で投げ込まれた感じ。こんなん息もつけないわ。

原作を読んだのは遙か昔でずいぶん記憶が薄いけど、でもコレたぶん小説の骨太さがまず効いてるよね。ってか冷静に考えるとキリスト教がああいう形で迫害されたのがすげえ特異だし、それを「踏み絵」ってなんともまあ象徴的な行為で示せるのはとんでもない。殺し合いとかじゃないもんね、踏み絵だもんね、そりゃあドラマになるよね。文芸的にキチジローをうまいこと主人公の影として使うその構成も見事、イノウエさまの立て方と見せ方も本当に素晴らしい。あとはやっぱり宗教に対する距離感の取り方が、今の時代も相まって抜群だよなあ。構想からだいぶ時間が経ったみたいだけど、今この時代だからこそ乗っけることのできるサムシングが乗っかってる気がします。

映像もさすがのデキで、雨月物語バチーンと差し込まれて「それやるんかい!」って笑っちゃうくらいだし、クライマックスでのスローモーションは「待ってました!」って感じ。あ、あと日本家屋の映し方も良いよね。90度正面から捉えるイノウエのカットと、やや斜めに移る主人公のカットを、後に一枚の画に収めることで統合する辺りとか、もう堪んねーなと思いました。まあしかし一番印象深いのは檻だよなあ檻。精神的に追い詰められていくあの一連の流れは、自在に視界をコントロールする檻の表現があるからこそ効くんだろうなあ。

にしても、スコセッシの信仰の部分ってイマイチ理解できていなかったんだろうなあ自分。普通に考えて監督にとってかなり重要な要素のはずで、これからはもうちょっと気をつけて観なきゃなーと思いました。

Focus

 

最近モキュメンタリーをガンガン観ていて、「コレも押さえなきゃだめだなー」という映画がAmazonプライムNetflixにそのままドンピシャで入っていることが多くビックリする。なんかブームなんだろうか。まあ弾数が必要とされている現状で、低予算かつ短時間でそこそこの面白さがでるこのフォーマットは重宝されそうな気もするけれど。

で、この映画なんだけど、基本に忠実ってことは本当に素晴らしいよなあ。最初のカットだけ芝居臭さがヤバくて大丈夫かなーとすげえ不安になったけど、「盗撮が趣味のオタクへのインタビュー」という大変美味しいアイディアで引っ張り込みがバッチリオッケーで、そこから先はノンストップ。撮影者がそのまま物語に介入するモキュメンタリーの特徴を十二分に生かしているし、偶然入る無線から大きく展開するあのゲリラ撮影感も最高。車でキレる長回しも良く計算されてるし、自宅シーンの生々しさ・どうしようもなさも素晴らしい。いやー、良い映画だなあ。

あと時々映像の端に見えるカメラマンのプロフェッシャナリズムがすごくよくて、カメラの位置やライトの方向にいちいちこだわるその姿勢が、作品全体にリアリティを付与してるよなあ。やっぱりこういう作品には細部が大事なんだなあ。レイプシーンですら独特の哲学で映像を映してしまうカメラマンにこそ、一番感情移入してしまうのは、なんか不思議な感じがします。

エロチック街道

 

エロチック街道(新潮文庫)

エロチック街道(新潮文庫)

 

筒井康隆はイマイチよく偉大さがわからなくてSF御三家とか断筆宣言とかタモリと親しかったとかラノベ書いたとかまあそういう漠然としたイメージしかなかったし、今まで読んだのも『時をかける少女』とか『家族八景』とか『大いなる助走』とかあとSFの短編集とか、そういうナンセンスとかはあっても基本的に見た目は面白がれる小説ばっかりだったので、いやこの短編集にはおったまげました。いやーすごい。文字とか弄ってドヤ顔している場合じゃないなあ。小説という媒体でこんなにも自由な発想ができるのかー、と終始感動しっぱなし。「ああタモリとか最初はこういうことをしてたんだろうなあ」とかも思うよね。

あとはビックリしたのが「ジャズ大名」で、映画を先に見たもんで「なんだか音符とか使ったりなんかして小難しい話なんだろうなあ」と思っていたのが、小説はなんだか凄まじく感動的なエンタメ小説になってたこと。異文化に触れて音楽を軸にコミュニケーションを取る、というのはまあ間違いのないセンなんだろうけど、そこにジャズの知識が不思議なくらい効いていてやっぱこういうディテールが聞くんだよなあ。で、クライマックスの過剰な演奏からの維新の晴れ晴れしさ! いやー魔法だなあ……

シンソウノイズ~受信探偵の事件簿~

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主人公が「他人の心の声を受信してしまう。ただし発信者はわからない」という特性を持った推理もの……なんだけれども、ガチガチの推理ものではない。むしろ能力を利用にすることによって推理の前提を組み立てているようなところがあり、「この中に犯人がいる」という前提条件を短いスパンで確立させるには確かに便利。ただしあまりにも物語を運用する都合に合わせて能力が設定されているきらいがあり、厳密に推理ものとして楽しもうとするにはちょっと苦しいかなーという感じ。物語も中盤以降徐々に能力者ものに移行していくのだけれども、どっちかって言うとそっちの文脈で広義のミステリとして読んだ方が精神衛生上よろしいのではないかなあと思う。推理パートも文章や絵からヒントを思い出して選択肢を潰していく論理パズルに近く、いわゆる鉤括弧付きの「トリック」を推理する探偵を想像すると全然違う。まあ、そこら辺の前提条件さえ間違わなければ、まずまず楽しめるのかもしれないなあ。

自分はどうもこの能力を持っているのなら何故こういう行動を取らないのか、といった点が気になって気になってどうも感情移入が阻害されてしまった。あの組織のガバガバっぷりとか、さすがにちょっと擁護できない。

あと絵、塗りが大変綺麗なだけにこれやっぱエロをもっとガツンとやってもらいたいよなー、とは思う。いやまあしょーがないんだけれどももったいない。