スコセッシって好きな監督のひとりだけど、「饒舌な監督」って印象が今も拭えないのね。まあ『シャッターアイランド』の時は「あ、なんかずいぶん今までと印象が違うな」って思ったんだけど、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』はまああんな感じだったので油断していた。でもさー、「沈黙」でまさかここまで変えてくるとは思わなかったよ。いやー、すごい。剛速球を全力で投げ込まれた感じ。こんなん息もつけないわ。
原作を読んだのは遙か昔でずいぶん記憶が薄いけど、でもコレたぶん小説の骨太さがまず効いてるよね。ってか冷静に考えるとキリスト教がああいう形で迫害されたのがすげえ特異だし、それを「踏み絵」ってなんともまあ象徴的な行為で示せるのはとんでもない。殺し合いとかじゃないもんね、踏み絵だもんね、そりゃあドラマになるよね。文芸的にキチジローをうまいこと主人公の影として使うその構成も見事、イノウエさまの立て方と見せ方も本当に素晴らしい。あとはやっぱり宗教に対する距離感の取り方が、今の時代も相まって抜群だよなあ。構想からだいぶ時間が経ったみたいだけど、今この時代だからこそ乗っけることのできるサムシングが乗っかってる気がします。
映像もさすがのデキで、雨月物語バチーンと差し込まれて「それやるんかい!」って笑っちゃうくらいだし、クライマックスでのスローモーションは「待ってました!」って感じ。あ、あと日本家屋の映し方も良いよね。90度正面から捉えるイノウエのカットと、やや斜めに移る主人公のカットを、後に一枚の画に収めることで統合する辺りとか、もう堪んねーなと思いました。まあしかし一番印象深いのは檻だよなあ檻。精神的に追い詰められていくあの一連の流れは、自在に視界をコントロールする檻の表現があるからこそ効くんだろうなあ。
にしても、スコセッシの信仰の部分ってイマイチ理解できていなかったんだろうなあ自分。普通に考えて監督にとってかなり重要な要素のはずで、これからはもうちょっと気をつけて観なきゃなーと思いました。