ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

完全なるチェックメイト

 

完全なるチェックメイト [Blu-ray]

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ボビー・フィッシャーの本やらドキュメンタリーやらを見ていつも思うのは「ボリス・スパスキーって寛容すぎじゃね?」ってことで、相手があんなわけのわからん難癖ばかりつけてくるヤツだったら普通サックリ交渉決裂させちゃって然るべきなわけじゃないですか。まして国家の威信を背負ってるわけでしょ? なんでそこまでしてボビー・フィッシャーと戦ったの? という疑問にこの映画はなかなか面白い回答を出していて、それだけで結構満足。フィッシャーが押し潰されそうになっているプレッシャーとスパスキーも向き合っていることを示すことで、逆にふたりは同じ境遇で戦う仲間のようにも見せてしまうのは、なかなか良い逆転の発想だなあ。

あと、思うにこの映画はボビー・フィッシャーの壊れていく精神を如何に表現するかに重きを置いていて、チェスのワンダーを正面から描くことを結構放棄している。『ボビー・フィッシャーを探して』のブリッツ描写みたいなチェスそのものが魔力を持っている、って感じの見せ方はしてないよね。ので、物語のクライマックスである第6局が、どれだけ素晴らしいチェスだったかを映像的に示すことはそもそも試みてない。代わりにその素晴らしさを伝えるのはスパスキーの拍手なんだけど、その後に入れ代わり立ち代わり示される世界中の中継画面で、チェスのワンダーがわかる人とわからない人で全くリアクションが違うのがなんともいえない。ある意味ボビー・フィッシャーのチェスの美しさそのものに惹かれた人間が彼の精神を壊したとも言えるわけで……いやあ、罪作りなクライマックスだよなあ。

 

 

アメリカン・ヒストリーX

 

アメリカン・ヒストリーX [Blu-ray]

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エドワート・ノートンくらいの体型の人間がこういう役柄やると大変リアリティがあって良い。頑張って肉体改造した感じだもんなあ。そこら辺の生々しさが良いよなあ。そうそう、生々しさ。子だくさんで父親のいない家庭環境とか、母親の交際相手と共にする食事の気まずい感じとか。金銭的に困窮している家庭のどうしようもなさがジリジリ伝わってきて辛い。あとは人種差別の種が尊敬している父親から植え付けられていたって救われなさも素晴らしい。人種差別なテーマ的にはむしろ今の方が色々考えさせられることが多いのかもしれいないですね。

にしてもホントストーリーで一本! って感じの話だよなあ。アレだけ引っ張って引っ張ってやってくるラストシーンでズドーン! とどんでん返し。そこに作文が被さってきて、いやあなんて皮肉で心にしみるラストでしょうか。あんなにバッチリ決まるラストってあまり思い出せないなあ。大変感心しました。ストーリー的には「刑務所内の改心がちょっと説得力なさ過ぎじゃない?」とか思わなくもないし、主人公のカリスマはもう少し見せられても良いかなあとも思ったけれども、まああのラストをやられたから全部許した。

ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬

 

ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 [Blu-ray]

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あら、これやっぱり続編なのね。まあ全然見ていて違和感なかったし全く問題ないだろうけど。

スパイ映画のコメディなんだけど、うーん、この役者ってこんなもんなのかしら。『MR.ビーン』1度も見たことないからわかんないんだけど、全体的に寒い感じになってしまっているよね。やっぱり演出がたるいのかしら。そんな面白い感じでもないネタをぼんやりとしたタイミングで並べられている感じ。スパイ映画のコメディとしても特に気が利いている感じではなくて、一番笑ったのがスイスの要塞だもんなあ。いやスイスの要塞はあれホント印象強かったよなあ。あ、そういや一応催眠で殺人とかも本歌取りっぽい感じにはなっているのね。でもスパイ映画ってお題の宝庫なんだから、もっとアイディアぶち込めるはずなんじゃないかなあ。敵のおばちゃん殺し屋はキャラが強くて、ラストのアクションのヨボヨボさとかは笑えたけど、それだけって感じ。そんなん帽子を飛ばす謎のアジア人の方がよっぽど笑える。

やっぱさあ、部屋で鉢合わせのあのシーンを、あんな雑に描いちゃいけないよなあ。全然普通にサスペンスのやりようがあるはずなのに。逆に何かこだわりがあるのか勘ぐってしまうくらい。

25時

 

25時 [DVD]

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いきなりツインタワーから始まるのがスパイク・リーって感じだけどそれがきちんと話の中身に調和してるかしら? まあ作品のタイミングからしても適切な位置で描くのは難しかったかもしれないけど、ちょっと悪目立ちしちゃってる感じがするなあ。

しかし時間前後とかしたりしてちょっとわかりづらいところもあるけれども基本的には本当にシンプルな話であり、そんなんたっぷり語るはずのことがあるのかわからんけどどうもたっぷり見入ってしまう。それぞれの役者が良い芝居してるのはもちろんだけれども、なんでこんな出来事も少ない話にじっくり見入っちゃうんだろうなあ。謎の吸引力。まあしかし普通映画では刑務所に入るってただの因果応報で「そういう展開ね」で了解取れてダイジェストで何年後、とかになっちゃうところを、そこまで悪人とも思えない人間視点で前日の心の動きを徹底的に描くというのは、なるほどなーという視点だなあ。

やっぱりラストは印象深くて、いやまあ演出的にはやり過ぎなんだけど、まあそのあざとさ含めてしょうがないよなあと思わされるよなあ。『イリヤの空、UFOの夏』とか思い出さずにはいられるだろーか。

にしても教師と教え子のエピソードはよくわからん。あれってなんなんですかね? 犯罪者になるのって割と簡単という話? あともうひとりの友人が株ディーラーなワケで、やはりそういう位置づけなのかしら。

エレベーター

 

エレベーター [DVD]

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えーそんなグロくすんのかマジか。子どもがいるから油断してたけどすげえショッキングだけどいいのこれ? キューブリックのシャイニング撮影時のケアとか思い出して本気かよーと思ってしまう。そのくらいグロくてショッキング。

でもさーなんであんなクソガキにしたんだろう。金持ちの娘のクソガキって確かにすげえ吸引力のあるパーツだけど、物語としては扱いが難しくて、どうやってそのクソガキへのむかつきを解消するかってキツいよね。因果応報で殺しづらいじゃん。この映画もやっぱりその感情的な回収が上手くできなくて、後半はただ泣きじゃくって救出されちゃうでしょ? いやー、そこら辺考えずにあそこまでの責任を負わせる描き方はちょっとあり得ないと思うなー。

そういう意味では終始脚本が雑な作品ではあって、ラストの展開はむしろ一周回ってギャグだよね。突然リーダーシップを発揮し始めるコメディアン、泣きじゃくるクソガキ、スプラッタのついでに突然始まるSAW的グロ展開、実はブッチャーだった社長、結局何の意味もなくやってくる救出、唐突にヒーロー的結末を迎えるデブ、「は? マジでそれで終わり?」というくらいとってつけた感のあるスタッフロール。ってかせめて不倫妊娠に対してはなにか回答を用意してやれよ……

エレベーターという密室状態での人間ドラマとか、外部とのライブ中継による面白さとか、色々面白くなりそうなヒントはあっただけに、大変もったいない作品だなあと思いました。

戦争のはらわた

 

戦争のはらわた [Blu-ray]

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うーん序盤がなんというかあまりのめり込めないまま話が進んでいき、オレ人間関係とかマジで興味ないんだなーとゲンナリしてしまう。スローモーションを間に挟んで細かくカットを割るペキンパーの例の演出も個人的にはあまり好みじゃなくて、色々と乗り切れないまま話が進む。爆薬ボカーン死人バタバタの大スペクタクル、最後には戦車まで登場! という戦場も、すごいなあとは思うけれどもワリと冷静に見ている自分がいてここら辺は演出技法の時代による進歩とかも関係してるのかなあ。

がが、オープニングやら終盤やらの音楽込みの演出はもうなんかもうどうにでもしてくれって感じで参る。ホントに参る。頭おかしいわアレ。実際好みかと言われるとあれだけドギツイ主張ってむしろ嫌いな方なんだけど、でもあそこまでガツンとやられるともうスクリーンから目が離せないよね。暴力的。あの柵越えシーンのスローモーションはもうこれ以上ないってくらいに決まってて、そうそうこれこれこれが見たかったんだよと思わず拍手でございます。そうだよなあどれだけ派手な場面も、ストーリーやキャラクターの内面と同調しないと機能したとは言えないよなあ、なんてことを今さら思いながら。

南京! 南京!

 

南京!南京! CITY OF LIFE AND DEATH(香港正規版)

南京!南京! CITY OF LIFE AND DEATH(香港正規版)

 

すげえなあ。こんな映画撮られてんだ。いやあすげえ。

というのはまず何よりも冒頭の市街地での戦闘が印象に残ったからで、あんなにバッチリスペクタクルな戦闘シーン描かれるなんてビックリしてしまいました。それだけでもう満足しちゃった部分は正直ある。

日本人の視点、というのもかなり重要で、例えば妻と別れての銃殺シーンの長いカットとか、フォーカスであんなに魅せちゃうんだからすごいよなあ。新年の祝いを持っていって飴舐めシーンとか、窓から無造作に子ども放り投げシーンとか、単体で印象に残るシーンが満載で、いかにも映画を観たって感じ。作品と現在とを繋ぐエンディングって他の映画でも結構あって、『シンドラーのリスト』とかがぱっと思い出せるけど、この映画のラストはすげえ印象が強くてなんなんだろうなあ。エンディングの演出をわざとらしいくらいガッツリやったからだろうか、それとも自分が日本人だからなのだろうか。

にしてもやけに集団カメラ目線の印象の強い作品だなあ。群衆が何かを口にするわけでなく抗議するわけでもなく、ジッとカメラを見つめ続ける。途中で「中国万歳!」とか叫んで虐殺されるシーンがあったけど、そのなかでたったひとり黙ったまま死んでいくほうが印象に残るわけで。それはこの映画全体のスタンスでもあって、ただ無心に作品に向き合うと良いんじゃないかなあ。