恥ずかしながらサマセット・モームは初、の、はず。スパイ小説の古典、ということで読み始めました。
いやあ、これめちゃくちゃかっこよくないですか? なんなのこの切れ味。最初はキャラクターが多くて個性もそんなどぎつくなくてでちゃんと読み通せるかどうか心配したんですけど、章ごとにどんどん面白くなってって、グングン加速して読んじゃいましたよ。っていうか各章ラストの切れ味が異常。それぞれドラマティックな事件が立て続けに起こるような感じではなくて、スパイの日常が細やかな心理描写で描かれるわけですが、まあキャラ立ちが異様によろしくてですね。スパイ小説なんてキャラクターはコマくらいに思っちゃっておりましたんで、個人への興味だけでこんなにお話が読めるなんて全く思わなかった。いやー、キャラ立て最高。全体を通して大きなストーリーがあるわけでもないし、あと小説自体もかなり古いはずなのに、こんなグイグイ読めるんだからなー。いやあ、モーム恐るべしって感じ。
印象に残るエピソードは多々あるけれど、やっぱりラストのロシア編が大変印象深く、アシェンデンがはじめて露わにする個人的な情熱がスクランブルエッグでいとも簡単にひっくり返されちゃうその説得力の持たせ方とかがホント鮮やか。からのー、切り返しで案の定下着持ったままあの落ちなワケでしょ? ストーリー上の必然性がないからこそ、キャラが立った愛おしい人物たちが運命に翻弄される様が、ホント印象深く残りますねコレ。