ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

ブレードランナー 2049

www.bladerunner2049.jp

傑作。いやー素晴らしいSFを見たって感じ。

SFは絵だって言ったのは誰だったかしら? 前作『ブレードランナー』のアジアからテクノロジーがやってきた! というイマジネーションはすでに陳腐化しているわけで、今更その焼き直しをやってどうすんのよ? と言わんがばかりのストーリーにまずは感服。冒頭の色彩に乏しい一軒家で何の説明もなく殴り合いを始める導入とかおしっこちびりますわ。過剰な説明なんて要らないんすよ。画面の端に土の中からの箱の掘った跡が垂直に切り立ってるだけで「なるほどそういう世界なのだな」って了解が取れちゃうわけですよ。それが架空の世界を創るってことなんすよ。

いやしかし陳腐化しているあの街並みから逃げることは全然してなくて、むしろCGを利用してありそうなネタを全力で映像化しているのには感服する。ベガスのステージとかもよくあんな見せ方できたよなーと関心。そして何より濡れ場だよ濡れ場。SF映画で『her』以上のセックスシーンなんてあるわきゃないと思ってたけどさ、あんなガチで映像的にもメチャクチャ強度のあるセックス撮られたらもう白旗です。

あのシーンもずいぶん長尺だったけど、それをちゃんと見せるだけの画面の強度になってるのもすごいよなー。ってか全体的にライティングがすごすぎ。冒頭のヤカン湯気からしてもう溜息しか出ない凄さ。あのおねーちゃんが歩くたびに光源動くのは何のためなの? とか思ってたら、社長とデッカード対立の超重要シーンで顔をぐるりと光が回って、動きが全然ないシーンなのに顔の陰影の変化だけで画面に釘付けになっちゃうんだもんなー。撮影監督ロジャー・ディーキンス。やっぱこの人の映像はスゲーや。

でまあ、この映画のストーリーってだいぶギリギリだよね。馬の木彫り一本でラインを繋ぐ大変危ういストーリーテリングで、たぶんこの画がなかったら成立してないんじゃないかなあ。論理的には繋げるのが大変困難な本線を、圧倒的な映像の説得力で繋げちゃってる感じ。ザ・総合芸術。ほんと素晴らしい。

にしてもアンバーを巡る映画だったなあ。冒頭の花(生殖器!)から蜂が繋がってデッカードに結びついたときは感激だったけど、上司の人が死ぬ直前にウィスキーを飲んでたり復活の場所では炎が燃えたりラストの水際決戦でもわざわざテールランプに波を反射させてアンバーにして、とか徹底的にやっていて、大変好感が持てました。