ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

葬送のフリーレン

 

なんかネットで「オタクの理想の老後」みたいな話があって気になってたんだけど、いやーこれが老後はマズいでしょ。っていうかそもそも主人公がエルフで老いと全く関係ないじゃん!! ここで書かれている「老後」って一体何を指してるのよ? どういう見立てなんか全くわからん! 勇者たちパーティーの老いも、一応描かれてはいるけれども、みんな善人だし実際の老いていく喪失感みたいなのは全然足りなくて、キラキラでカギカッコつきの「老後」で、真面目にそこに老いを見ちゃマズい題材でしょコレは。

フリーレンの人間との向き合い方については色々疑問があるというか、そこまでの人生における彼女の人間との関わりが想像できないなあと思うし、勇者とのふれあいの中で人間の見方が変わったというのは、もう少し大きな出来事でなければ不自然じゃ無いかなあ……という引っかかりはちょっとだけある。あるんだが、まあそれはこの構造でストーリーを語るために仕方ないところではあるよなー。

面白いのは、冒険を続ければ続けるほど、最初テキトーなキャラにしか思えなかった勇者の強さが立っていくこと。現在時間で強い敵が出れば出るほど、勇者が化け物だったということがわかる構造で、うーんあいつらマジで本当に魔王を倒せるほど強かったの!? となる。まあ、そういうところの理由付けはかなりしっかりしていて感心させられるから、きっと何かちゃんとあるのだろうけれども……

アクションもイイし、ストーリーもこの構成が生きているしで、とても良い作品でしたよ。

古代メソポタミア全史 シュメル、バビロニアからサーサーン朝ペルシアまで

 

あいかわらずあとがきがアツいな。小林登志子の本、あとがき読みたさに買ってしまいたくなるよ。

神話とかがとっかかりになってはいるけれども、さすがに全般的に馴染みがなさ過ぎて、ちょろちょろ流し読みになってしまう。地理感もないので、具体的なビジュアルとかがないところは、ちょっと厳しい感じもあるよねー。とはいえ、世界史で出てきた名前があるとテンションが上がるのは事実。安息国とか聞いたのもうめちゃくちゃ久しぶりすぎて笑っちゃったよ。

まあしかし、特にバビロンって歴史も長いし興亡も激しいしで、全体の流れが全然掴めなかったのが、ようやくなんとなく見取り図が取れた感じで良い。バビロン捕囚って単語はおぼえてたけど、なるほどあんなに後の時代の話だったか。エジプトとかとの関係が入ってくると、途端に東西の時代が連結される感じでいいよなあ。

あとまあ、イランというかペルシアというか、そこら辺の文化的差異をきちんと押さえておかなきゃならんのだよなーとも思った。っていうか、イスラム教が広まる以前の中東地域って、やっぱりちょっとイメージが湧きづらいよなあ。馬が途中から、というのはともかくラクダが使われるのが結構後なのもビックリするもんなあ。

実録ブルース・リー/ドラゴンと呼ばれた男

 

これは映画なのか? テレビっぽいつくりではある。

なんか最近、世界サブカルチャー史で「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」がわりと批判的な視点で語られていたのもあって、ブルース・リーのドキュメンタリーを見ると、タランティーノの演出がますます「うーん」って感じに思えてしまうな。世界サブカルチャー史では、ヒッピーが悪として描かれていたことに対する批判だったけど、ブルース・リーのこういう背景を見ると、やっぱりもうちょっと描き方はあったんじゃねーのかなあ、って感じはするよなあ。まあそもそも、ガンガン路上で道場破り仕掛けられる状況だった、というのがちょっと想像の斜め上過ぎるわけではあるけれども。

しかしまあ、迫害されていたマイノリティが夢を掴むが、その反動で精神に負担がかかり薬物で命を落とす……というストーリーにどうしてもなってしまうよなあこれは。武術を嗜んで精神修養しても、そうなってしまうんだなあ。幼い頃からショウビズの世界にいたっていう状況も、うーんいかにもスターって感じ。息子が不慮の事故で命を失ってしまうところも含めて、なんかちょっとできすぎていて怖いよねえ。

ゼロからわかるメソポタミア神話

 

一回ザラッと文字媒体で神話の内容をさらっていたので、大変頭の中に入りやすくて良い。物語でキャラクターを認識することの大事さがよくわかる。イシュタルのアレさ加減とか、こうやって改めて指差し確認されるとだいぶ納得感がある。「この神様どこかで見たことあるような……」というのが、ちゃんとフォローされるのも助かる。ずらららっと出てきて目が滑りがちなティアマトの怪物なんかもいちいち解説してくれて助かる。大変良い順番で知識を吸収している感じがある。良い。

それにしてもメソポタミア神話、全然馴染みがなかったんだけど、やっぱFGOの効果でこういう本が出ているのだろうなあ。FateとFate/Zeroはまあ追っていて、ギルガメシュがキャラクターとして出ているのは知ってるけど、バックグラウンドは実はあんまり良く知らなかった。FGOにはあまり触れてないので、その先もどこまで彫り込まれているか、アニメで一度見ておかないとなあ……

にしてもリリスがアダムと別れたきっかけがセックス体位というのは笑うしかない。直近で見たハズビンホテルを思い出して愉快な気持ちになっちゃうよね。

処刑人

 

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わはははは、そんなのアリか。いやー、なかなか小洒落てて面白い話よねえ。時間軸をパンと飛ばして、検証の回想で事件を見せるというのは、時間軸の省略ができるし、意外なキャラクターも出せるしで、かなりイイカンジに機能していると思う。このくらいの塩梅で興味を引けたら最高よなー。

と思ったら、ラストで急にこっちに問いを投げかけてくる形になるのもなかなか気が利いていて、まあああいうのがあると「名作」の括りに入りやすそうだなあ、と謎の納得をしてしまう。あんな直接的に、視聴者に物語の結論を投げ込まれると、そりゃまあ考え込まずにはいられないよねえ。露骨だけど効く。

ノーマン・リーダスってデスストで認知して、他にあんまり印象ないなーと思ってたんだけど、なるほどこの映画を見たら印象に残るかも。他になんか見てたっけ? とおもったら、あー、ヘルヴァ・ボスにも出てたのね。さすがに声だけだとわからんわ。

まあでも役者で言えば、ウィレム・デフォーがおいしいところを持って行きすぎではあるんだけど。謎のクラシック推理からの同性愛からの女装って、いやまあ今見るとかなりステレオタイプで危なそうな感じもするけどね。まあ、FBIウィレム・デフォーならしょうがないか、という感じはある。

メソポタミアの神話

 

あー、これは良いですね。

神話系の話っていつもどうしても読み飛ばしてしまうきらいがあるんだけれども、めちゃくちゃ楽しく読めたのだった。途中で「ここら辺、正直断片的でよくわからないんだよね」みたいな注釈があったのが良かったのかなあ。いや、神様ってちゃんとキャラ付けされてるんだろうけれども、大抵あんまりピンとこないことが多かったのよ。でも、この本の神様については、ビジュアルイメージもないのに、わりとしっかり内容が頭に入ってきて、我ながら不思議。

まあ、今まで色んな小説やらゲームやらで掠っていたワードがあったのが良かったのかもしれないけれども。あ、あと前に読んだ本でザックリシュメールの文化について学んでいたのも大変良かったよね。アレがなかったら、3種類の言葉で語り直される神話ってのもよくわかんなかったところがあるだろうし……

どの話もインパクトがあったり見所があったりで面白いんだけれども、一番ビックリしたのは股間に噛みついたら精子飲んで妊娠しちゃったヤツ。展開が急すぎるでしょ。ってか神話なんて精子とかなくても普通にこどもできたりするじゃん!

シュメル: 人類最古の文明

 

変な話なんだけど、とにかくあとがきに度肝を抜かれてしまったよ。普通にメソポタミア文明の辺りの話を知りたくて本を読んでいたのに、まさか作者の全共闘時代の私的な感傷バリバリの呼びかけで本が閉じられるなんて……いや、全然イヤな感じはしないというか、むしろ作者がなんでこんな日本と縁遠い分野にのめり込んでいったかの一端が見えて、とても好感は持てるんだけど。っていうか急に熱くてイイですよね、このあとがき。めちゃくちゃ印象に残りました。

でまあ、本自体はシュメール人について一通りざらーっと基礎知識を与えてくれる感じでとても良い。神話の方から始めようかとも一瞬思ったんだけれども、やっぱりこういう文明全体の見取り図が先に頭に入っていた方がいいよなーやっぱり。洪水の話とかにも触れられていたとおり、キリスト教圏だと自分たちの文化と連続性を持って捉えることができるんだろうけど、オレたちには無理だからなあ……

ユーモア交えていろいろなポイントを教えてくれて大変面白いんだけれども、一番笑ったのは「定礎」かな……まさかそんな時代から定礎があるとか思わないじゃん。やっぱり建築ってのは文明において特異な営みだし、それには文字による証明みたいなものが必要とされるんだなープリミティブなんだなーと思っちゃいましたよ。