ガチラノ

死ぬほどどうでも良いわ…

天国から来たチャンピオン

 

天国から来たチャンピオン (字幕版)
 

そ、そ、それでえーんかーい! 色々突っ込みどころが多くて、しかしまあ映画全体の基調となってるゆるさみたいなのがそのヘンテコ加減を許容している感じ。スモークもくもくの謎空間で目覚めたら、手違いで死んじゃっててあーゴメンゴメンみたいな雑な導入。ってか何で飛行機乗るの? 大富豪となって生き返っても目指すのはアメフトのワールドチャンピオンとか、よーし行ける! と思ったら雑に死ぬとか、挙げ句スーパーなタイミングで死んで入れ替わってハッピーエンドとか、いやまあ普通に考えるとあまりに行き当たりばったりでなんとも納得できないはずなんだけど、理屈なんてそもそも主人公が生き返ってる時点でどーでもよくなっちゃってるわけで、流れでハッピーエンドにタッチダウンできれば万事オッケーなのである。なんと素晴らしきスーパーボウル。ラストのふたりがそれとなく運命に引き寄せられて仲良くなっちゃうのもねー、『バタフライ・エフェクト』じゃないんだものね、ちゃんと幸せな結末で締めますよね。

そもそもさ、このジャケットがあほくさいよね。たまらんバタ臭さ。ってかこの絵からこの映画の内容を想像するのってちょっと難しくないですか? チャンピオンっていうからボクシング映画だとばっかり思っていたよ。

しかしなんで土葬じゃなくて火葬なの? 作品中でなんか説明あったっけ?

気狂いピエロ

 

気狂いピエロ [Blu-ray]

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うーんうーんうーん。ヌーベルバーグは全然わからんなあ。なんだか革新的だったんだろうことはわかるのだけれども、いやしかし正直言っていったいどこを見りゃ良いのかさっぱりわからん。『勝手にしやがれ』のほうがまだ色々見て楽しいところがあった感じ。もしもこれがネイティブだったらもう少し楽しく見られたのかしら? そんな感じもしないのだけれどもなあ。ってか一般的にはどこら辺が評価されているのかをむしろ知りたい。虚心坦懐に作品を見つめようと思うんだけどどーしてもダメ。たぶん根本から映画の見方を変えなきゃ楽しめないんだろうなあコレ。名作たる所以が全然分からないのは自分の視野の狭さをほんと思い知らされるなあ。しかしホントにこれ面白く見てんのかなあ。うーむー。

フランス映画の流れとかバックグラウンドとか1回勉強してみないといかんのかしら。ドイツ映画ってまあなんとなく歴史的背景から立ち上がるイメージがあるのだけれど、フランス映画って全くよくわからんしなあ。サルトルとかそういう思想みたいなところから追っかけるのはショージキしんどそうだしそこまで興味もないのでうーんと迷うところではある。

ガス燈

 

ガス燈 [DVD]日本語吹き替え版

ガス燈 [DVD]日本語吹き替え版

 

うっわしんどー。なんだこの最高にしんどい内容。こんなゴリゴリメンタル削られる作品も珍しいわ。というのは作品のネタが結構序盤でわかっちゃうからであり、まあ普通こういうつくりだと「あーはいはいわかってました別に大したことない脚本でしたね」で終わってしまいそうなところなんだけど、この作品はむしろその見え透いたタネ明かしを最大限に生かしてメンタル削ってくるので凶悪。こういう構造だと主人公の行動に不満を抱いてしまうことがしばしばあるけれども、この作品はイングリッド・バーグマンの繊細な演技とシャルル・ボワイエの硬軟織り交ぜた芝居で引き込む引き込む。大切なブローチをなくさせることで負い目を負わせるところからスタートするあたりとか、メイドを巻き込んで閉鎖的な人間関係を構築するアタリとか、いやーこれ大変実践的なDV指南書でございますね。こういうのはホントにゴリッとメンタル削られるわ……

でもあのサゲはひどいと思う。あのクソ忙しいタイミングでおばちゃんを差し込んでいったい何するかと思いきや、最後のカットに使うためだけなのかよ。どれだけゆっくり階段を上がってたんだ。序盤から思わせぶりな登場だったけど結局全然活躍しないし、うーんもうちょっと生かしてあげたかったところだよなあ。

ハチワンダイバー

 

ハチワンダイバー コミック 全35巻完結セット (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー コミック 全35巻完結セット (ヤングジャンプコミックス)

 

変な漫画!! ちょうど前後して小池重明の本を読んでたし、元奨励会員の創作もなんだかんだ触れているので、はてさてどんな話なのかしらねーと読み始めたらあまりにブッ飛んだ内容でまあ笑うよね。今の時代で真剣師をリアリティもって描けやしないのはわかるけどさー、だからといってここまでカッ飛ばしますか? その心意気や良し! 

基本的に切れ負けベースの賭け将棋を舞台にすることで、対局中の会話を可能にしつつスピード感を持ち込んだのは素晴らしいよなあ。あのハッタリと勢いがなければこのトンデモなストーリーは成立しないので、そこらへん大変優れた仕掛けだなあと思いました。

しかし全体の強さのコントロールには失敗している感がかなりあって、まあ連載というのはこういうものなのだろうけど、しかしもう少しこう計算があっても良いのではないのかなーとは思う。構成的には中盤のドンドン登場人物が死んでいくパートの絶望感がヤバくて、普通は盛り上がるトーナメントパートのぬるま湯感が異常。キャラクターの死という切り札を使うタイミング、間違ってるよなあやっぱり。

それぞれのキャラクターの強さの見せ方にも問題があって、キャラクターの特殊能力の描き方が甘いよね。将棋の技術的内容に深く踏み込まないのはしょうがないのだろうけど、それならそれでもっと比喩としての表現をキャラクターごとに明確に印象づけるべきだよなあ。主人公は水の比喩を強調するほうがわかりやすいし、受け師の属性も徹底されていないし、ってか色んな人が他のキャラクターの属性をラーニングしすぎだし。無駄な格闘パートはそれはそれで愛情ダダ漏れで面白いことにはなっているけど、将棋の表現としてみたときは全然上手く噛み合ってないよね。プロ棋士の強さの見せ方も混迷を極めていて、師匠の強さがあんまり良くわかんないし、名人の出し方もかなり雑だし。全体的にプロの扱いを持て余している感じ。

でもまあ、そう言った部分の完成度はこの奇妙なライブ感とのトレードオフなんだろうなあ。そういうツッコミも含めて、コレはコレで楽しいのかもしれないと思いました。

サピエンス全史

 

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 
サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

 

なんかツイッターで見たんですよこの本を漫画に砕いたヤツが。小麦を擬人化して人間を騙す内容。私『銃・病原菌・鉄』で農耕がどのように宗教を生み出すかって展開にすげー感激してこういう歴史系の本を読み始めるようになったので、はっきりいって反感を抱いちゃって、果たしてどんなもんかなあと読み始めたんですよ。そしたら確かに農耕で人間は幸せになったわけじゃないという主張を行っているけれども、小麦を別に擬人化したわけじゃない。それどころか、後の章でこんなこと書いてあるじゃないですか。

留意してほしいが、遺伝子同様、軍備拡張競争に自覚はない。それは生き延びて繁殖することを意識的に求めはしない。それが広まるのは、強烈な力の働きの、意図されていない結果だ。

いやー、こういう本でわかりやすさを優先して擬人化しちゃうのはどうなんすかね。

 

全体を通して色々いいたいことはある本で、特に幸福を巡る話の辺りが心底どうでも良い。人類にとっての本当の幸福とは何か、という問いかけにある程度の回答をもたらそうとしているけれども、それだって結局我々の常識的な物語の規範から逃れきれていないわけで、そんなチンケな常識遺伝子操作で人間の寿命がなくなったら確実に変わるわけじゃないですか。仏教の幸せに関する考え方とか奥の手っぽく出されて考え方自体はふーんなるほどとは思ったけど、基本的には全く意味があるようには思えず、この本の後半を締める構成には大いにガッカリさせられました。

が、基本的には発見連発の本でありまして、「全史」の名に恥じず人類の歴史が生み出した様々な現象を思いも寄らない角度から意味づけていくのは大変エキサイティング。特に認知革命から流れるように貨幣の交換が担保される下りへと展開していくのは、うへーなるほどと感激さえ覚えました。他にも、一神教が攻撃的になるという指摘は改めて考えりゃ当たり前だけど見落としがちだし、科学は金が要るって指摘も改めて言われるとむちゃくちゃ説得力があるし、金を使って金を増やすという考え方が革命的だったってアダム・スミスの偉大さを思い知らされるし、宗教と科学の根本的な違いが自分を無知とおくかどうかというのは「反証可能性」ってワードよりもよっぽど実感に引きつけて理解できるよね。まあとにかく目からウロコがポロポロポロ。

正直反感を覚える箇所も多いけれども、それはそれとして大変面白い本でありました。よくもまあこんな広範囲の話題をまとめたもんだよなあ。

マンハント

gaga.ne.jp

つまりジョン・ウーは現実から浮遊しなきゃいかんのだな。序盤の珍妙な日本っぽい土地でのカタコトやり取りからの殺陣は、現実とは違ったもうひとつの「ジョン・ウージャパン」を規定するとみるべきで、そこに引っかかってはいかんのだろうなあ。そういう意味ではいきなり始まるバブルなダンスもジョン・ウージャパンとして片付けなきゃイカンし、なんかよくわからん平地になんかよくわからん状況で設置されてる鳩小屋もジョン・ウージャパンで納得しなきゃならんし、突然ドヤが現れて主人公を匿ってもしょうがないしょうがないしょうがないしょうがないってんなわけあるかーい!! と叫び出しそうな自分の理性を収めるので必死。やっぱ日本が舞台なのが悪い方向に振れちゃってるよなあ。

ストーリー展開も当然ツッコミどころが満載なワケで、追跡者とか暗殺者とかが超グッドタイミングで鉢合わせするのにはさすがに爆笑した。仮面ライダー龍騎とか思い出すストーリーによってキャラが操作されてる感あった。にしても今時製薬会社が悪の黒幕で格闘能力を覚醒させる薬を開発して一儲けとか、もうこれ一周して感動を覚えるレベルだね。なんか悪そうで色々ヤバそうな製薬会社で火花がバンバン散るラストバトルとかまさかこの時代に見られるとは思わなかったよ。

逃亡者と追跡者がお互いに手錠で片手を不自由にしながら共闘するあのシーンが白眉で、まああそこがちゃんと描けてるからまあいいのかなーとは思う。欲を言えばもう少しふたりの立場、というか抱える何かが対立しているみたいなのが明示されると良かったのかしら。対立がもうちょい情念滲んでりゃなーとは思う。

 

クレオパトラ

 

クレオパトラ <2枚組> [Blu-ray]

クレオパトラ <2枚組> [Blu-ray]

 

こ、これがあの伝説の作品『クレオパトラ』か! いやー私もそんなにディープな映画ファンではございませんが、普通に映画の知識を得ているとちらほら見えてくるわけですよなんか希代の失敗作としての『クレオパトラ』の噂が。そんなにやべーの? と思って見始めたところ、うん、これはやべーや。

もうね、とにかくスペクタクルが異常。もちろん古き良きハリウッド映画がスペクタクルがちょっと信じられないくらいスペクタクルしてるのは知ってるし、モノクロ時代はともかく『ベン・ハー』とか『アラビアのロレンス』とかは押さえていて、うおーすげーなー人間がいるからこそ出る迫力ってあるよなーと感心したりする。

だけどさー、この映画におけるスペクタクルはヤバイよね。大量の人員が珍妙なコスプレをしてシリアス演技の後ろでボーッと立ってるだけ。熱演すればするほど醸し出されるなんとも言えない学芸会感。なんだこの演出は。さすがにエキストラが減ってからは名優たちが熱演するのがそこそこ見せるし、決まるところでは鮮やかな彩りがバシッと決まってたりするんだけど、いやーそれにしたって4時間はなげーよ。4時間。ないない。カメラもドリーすべき所でへなへなな手持ちカメラだったり、そもそもシナリオが冗長過ぎたり、もう映像を見ているだけでなんか色々混乱しきっている感じが伝わってきて、うーんある意味でとんでもない映画だなあ……。

っつーかこの映画観てからだと『ヘイル、シーザー!』の見方が違ったりするのだろーか。あんまよくわからん映画だったからなーあれも。